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 特 集 
 レポート 
 「くみあい百景」 
 編集室だより 



改善意識は現場から



 二年ほど前から、専門家と共に中小企業の製造現場に入り込み、職場・作業環境等の改善の機会に恵まれ、その実態に触れてきた。
 いずれの中小企業も、厳しい経済環境下、発注先からの品質・コスト・納期等の厳しい要請をクリアするための努力を重ねているが、現場に入り、「なぜこの無駄を改善しないのか?」という場面に遭遇する時がある。
 その多くが、現場作業者への「原価意識」や、「2S(整理・整頓)」が浸透していないことに集約される。 一例として、『プレス工程』での事例を記載する。
 「受注量はプレスしたが、もう一度金型をセットするのは面倒だし、またすぐに発注があるだろうから、残った材料をついでにプレスしておこう」と余分にプレスをしている例がある。
 一見すると、もう一度金型をセットする時間と労力を削減し、次回の発注に備えたように見えるが、ここに大きな落とし穴がある。 それは、余分にプレスした製品が、短期間に、しかも確実に発注されるならまだしも、次回発注が長期間なかったり、形状(図面)変更等があったらどうなるであろうか?
 他への使用も可能な『有料』の材料に、プレスという『付加価値』(製造原価)を加えた製品がそのまま在庫や無駄なものとなったならば、トリプルパンチでの大きな損失となるのである。
 こうした、原価意識の希薄さに加え、作業を進める中で部品や工具・冶具を身近に順序よく配置しないため、探す・移動するという無駄な行動が生産性を阻害していることに現場作業者はもとより管理者でさえ気が付いていない例がある。
 それでは、JIT(ジャスト・イン・タイム)生産を求められる現在、どのような対応が良いのかということになるが、専門家の回答は、金型のセット(段取り)時間の短縮という「生産効率向上」を挙げている。
 その方法は、現場作業者の中から代表者を選び、他の作業者が見ている前での、”公開段取り“を行うことによって、その作業者の段取り方法を学ぶと共に、他の作業者のより良い方法の採用等、切磋琢磨の中で生まれる改善が一番だという。

生き残りをかけ

 本年度、私自身が担当したいくつかの組合員企業実態調査の中で、「売上・利益共に減少」との回答が多くを占める中、発注先からの厳しい要請に対応する過程で、自社技術や生産性の向上によって「売上や利益が改善傾向にある」と回答する企業が増えつつある。
 上昇傾向と回答した企業すべてではないにしても、厳しい経済環境下、企業の生き残りをかけ努力した内容には、入ってくるものが少なければ、それなりに出るものを抑える工夫があったと思われる。
 事例のように、これまで当たり前に行っていた『意識せずに出している無駄』を徹底排除するため、費用対効果を意識した改善に積極的に取り組むことが生き残りにつながる。
(伊藤)



中小企業静岡(2004年4月号 No.605)