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 「くみあい百景」 
 編集室だより 



特集 消費税徹底チェック!

主要改正事項と留意点

1.免税点制度の引き下げ

 改正前までは基準期間の課税売上高が3000万円以下の事業者は免税事業者として、消費税の申告納税する義務がなかった。今回の改正では、この基準期間の課税売上高が引き下げられて1000万円超の事業者にまで課税範囲が拡大された。
 「消費税課税事業者選択届出書」を提出していない免税事業者は、基準年度の課税売上高が1000万円超から3000万円以下であれば、課税事業者に該当することとなった。
 これに伴い約136万事業者が新たに消費税の課税事業者となると見込まれている。
 消費税については、導入当初から本来は全事業者に適用すべきであるという議論が存在していたが、導入を円滑に進める必要性や小規模事業者の事務負担等を配慮して免税点制度が採用された。消費税は国民全般の生活にかかわるものであり、一定規模以下の事業者が消費税を消費者から徴収しているにもかかわらず、納税義務が免除されていたのではないかという、いわゆる「益税」に対する批判が存在した。小規模と思える事業者が課税事業者として納税義務を負っているか否かが、一般の消費者には判断が困難で、消費段階で消費税を徴収されることに対して疑問をはさむ余地もなかった。
 導入当初は取り扱いや実務面での混乱を考慮に入れ、定着するまでの時間的経過も必要であり、小規模事業者数が多いわりに徴税予定額の占める割合は少なく、要するコストを勘案すれば除外しても、問題は生じなかったものと推定される。
 しかし、導入から十五年も経過し、情勢はかなり変化してきた。財政に占める間接税としての消費税の役割は、長い経済の低迷状況が続く中にあって安定財源として重要性が高まってきた。国民の消費税に対する慣行も定着化し、徴税側の受入れ態勢も整い、聖域視されていた免税点制度への取り組みが可能となり、「益税」の因、免税点制度の引き下げに踏み切ったものといえる。

免税点制度・簡易課税制度の適用上限引き下げ

適用範囲
従前
改正後
免税点制度
課税売上高
3千万円以下
課税売上高
1千万円以下
簡易課税制度
課税売上高
2億円以下
課税売上高
5千万円以下
適用時期
法人
平成16年4月1日以後に開始する課税期間
個人事業
平成17年1月1日以後に開始する課税期間


2.簡易課税の適用基準の引き下げ

 小規模事業者の事務負担を配慮して、免税点制度とともに簡易課税の特例措置が設けられていた。消費税の計算は、前段階控除方式を採用しているため、一般課税方式により、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を差し引いて納税申告する方式であるが、仕入に対する内容を吟味し、課税、非課税、不課税かを個別に判断し帳簿に記載していく手間を考え、一定規模以下の事業者に限定して簡易課税制度の選択適用が認められた。
 基準期間の課税売上高が5億円以下の事業者は、適用しようとする課税期間の開始前日までに選択届けを所轄税務署長に提出することにより、課税売上を把握すれば、業種別のみなし仕入率を適用して、簡便に納税申告をすることができた。
 この制度については、導入から見直しが行われ今日に至っている。第一は基準期間における課税売上高の適用基準の引下げである。当初は基準年度の課税売上高5億円以下の事業者に適用されていたが、その後基準年度における課税売上高の適用基準が4億円になり、現在では2億円以下となっている。今回の改正では5000万円以下になった。
 改正により約56万事業者が、簡易課税の選択を自動的に適用できなくなり、本則による課税方式への転換を要することとなった。
 もう一点は業種区分の細分化によるみなし仕入率の変更である。
 当初は卸売業とその他の業種の2段階であったが4区分に変更され、その後その他サービス業としての「第5種」も追加され、現在では5区分のみなし仕入率となっている。みなし仕入率の細分化により、より本則課税に近い状態になっていった。
 簡易課税適用が改正された背景は免税点制度の見直しと同様、「益税」に対する批判からである。
 免税点制度に比し、簡易課税選択可能性のある事業者の範囲は、売上規模的には相当程度までが含まれていたため、その与える影響も無視できない状況にあったといえる。



中小企業静岡(2004年2月号 No.603)