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茶所を静岡を支える製茶機メーカ
機械メーカーを企業組合で運営

 個人が一人一人の知識や技能を持ち寄り、一つの企業体として事業を行う企業組合。小規模な事業者が経営規模の適正化を図ったり、自らの働く場を確保することを目的に、現在県内で約三〇の組合が活動している。
 企業組合静岡機械製作所もそのひとつ。製茶機械などの製造販売を行っている。県内で唯一、企業組合として運営される機械メーカーである。 
 設立は昭和二八年。この年、現在理事長を務める磯谷恵一氏が、静電気を利用した茶葉の選別機を開発。
 「これを事業化しようと、県の商工部や商工中金に相談したところ、企業組合制度を紹介されたんです」(磯谷理事長)
 当時は第二次大戦後の復興期。復員してきた人たちと一緒に事業を起すことを考えていた磯谷理事長にとって、企業組合は都合のよい制度だった。
 こうし十四名の組合員によって組合を設立。工場と組合事務所の建設には、昭和三〇年から高度化資金を利用するなど、組合としてのメリットを活かしながら事業を行ってきた。

 

注文に応じて製茶機を開発

 組合であつかう製茶機は、主に製茶の“仕上げ”という工程に関するもの。茶葉のふるい分けや火入れ、乾燥など、さまざまな作業を省力化する。
 「それまでは、製茶の仕上げはすべて手作業で、農閑期に農家の人たちの手を借りて行っていました。しかし、農業も時代とともに年間を通じて農作業が行われるようになり、茶の仕上げ作業をする人手が足りなくなっていたんです」(同) 組合ではここに着目し、昭和三〇年代から四〇年代にかけて次々と製茶仕上げ機を開発した。現在、組合で扱う製茶機は数十種類。さらに顧客の注文に応じて大きさや形状を変えたり、個々の機械を組み合わせた複合機を作るなど、実質的な製品の数は限りない。
 機械が開発されたことで、それまで手作業に頼っていた製茶技術は急速に近代化。組合は製茶業界にとってなくてはならない存在になった。
 組合で製作する製茶機は「静岡式」と呼ばれ、県内にとどまらず全国に普及。さらにはインドや中国など、海外でも利用されるなど、この分野では日本一のメーカーである。

 

食品用の新型滅菌機を開発

 組合では昭和四〇年代後半より、製茶機以外の機械も手掛けるようになった。選別機などの製茶機が、食料品や医薬品等の製造にも利用できることがわかり、これらの業者から問い合わせを受けるようになったためである。
 「もちろん製茶機をそのままで使うことはできませんが、研究し、手を加えることでいろいろな分野で応用できます」(同)
 大手企業から研究依頼を受けることも多く、様々なニーズに応じた機械を開発してきた。
 組合ではこうしたノウハウを活かし、この3月にヒジキやワカメなどの海産物に付着した雑菌を処理する新型の滅菌機を開発した。
 この滅菌機は、製茶用火入れ機を応用したもの。回転するドラムの中に海産物を入れ、そこに加湿熱風を吹き込んで滅菌する仕組みである。
 この方法により、これまでの滅菌機に比べて価格が三分の一程度に抑えられる上、滅菌力も強くなる。
 昨年のO 157騒動を契機に食品の衛生管理への要求が厳しくなる中、この滅菌機へのニーズが高まることが期待される。
 「今後も製茶機を中心に作っていくことは変わらないが、それだけではやっていけなくなります。製茶機を通じて培った技術をほかの機械に応用して、事業の幅を広げていきたい」(同)
 組合設立からまもなく四五年。いま、組合では日本一の茶どころ・静岡を支える一方で、新たな可能性を求めて研究開発に力を注いでいる。

 

▲製茶機を応用した新型滅菌機


 中小企業静岡(1997年06月号 No.523)
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