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役場の自慢話  組合にしひがし  あるある全国おもしろ組合  300字登場  編集室便り

 昨年度、県下では三一の組合が誕生した。
 組合を構成する組合員の業種も、目標とする事業もさまざま。
 それぞれの組合の特性を生かした活躍が期待されている。
 今回の特集では、これら組合を一挙に紹介するとともに、過去十年間のデータと比較しながら、昨年度の設立の傾向を報告する。

県内の活発な組織化

 昨年度の本県における設立件数は、31組合。
 データは一昨年のものだが、全国の設立状況を紹介すると、7年度に全国各地で設立された組合は、903件。一都道府県あたりで、平均19組合が設立された勘定になる。
 また、ここ10年間で、全国での設立数が最も多かった年は、4年度の1003組合。この年の1都道府県あたりの平均設立件数は、21組合である。
 一方、県内の設立状況をみてみると、昭和61年度から平成7年度までの10年間に332の組合が誕生している。平均して1年間に33組合が誕生していることになる。
 この10年間で、本県の一年間の設立件数が30組合を下回ったのは、平成6年度の26組合の1回だけ。
 昨年度も31組合が誕生しており、こうした数字をみても、県内中小企業者の組織化に対する高い意欲を感じることができる。

任意組織の実績をひっさげて
 昨年度の設立には、全般的にみて二つの大きな特徴がある。
 そのひとつは、設立された31組合の約半数が、組合の母体となる任意組織での活動実績があった点である。
 任意組織当時の活動は、情報交換や技術交流、受注の斡旋や販売促進などのほか、共同施設建設の研究や新商品開発といったテーマを掲げたグループもある。また、任意組織での活動期間が半世紀にも及ぶものもあり、こうした実績をひっさげて、もう一段上の展開を目指して組織化に踏み切った事例が多く見受けられた。
 いまひとつは、この4月に施行された「容器包装リサイクル法」に関係して組合が生まれた点だ。
 事業者・行政・消費者が三位一体となって、ペットボトルなどの容器や包装資材のリサイクルに取り組むことを目的に誕生したのがこの法律。
 昨年度の設立では、古紙やペットボトルの回収作業を組合が中心になってシステム化したうえで、行政などから回収業務を受注していこうというケースがいくつかみられた。
 このように、法律が施行されたことに伴って、組織化が活発化した例はこれが初めてではない。
 昭和63年には、異業種で研究開発に取り組むことを目的とした「融合化法」が誕生し、これを境に“融合化組合”が毎年コンスタントに誕生し成果をあげている。
 また平成2年に「前払式証票の規制等に関する法律」が施行されたことで、商品券などを発行する任意組織の多くが法人化した。
 今年4月に施行された「容器包装リサイクル法」も、平成12年には現在猶予措置が取られている中小企業者も法律の適用を受けることになるため、今後、この法律に何らかの形で関係した組合が誕生してくることが予想される。
(G―1参照)

■過去10年間の組合設立件数の推移
単位:組合(静岡県内:複数回答)【G−1】

主軸は「共同受注」
目立つ「研究開発」

 次に、設立された組合が取り組もうとしている事業についてみてみたい。
 まず全国の状況をみてみると、平成7年度における重点事業のトップは「共同受注事業」(全体の35%)。
 この傾向は本県のケースでも同様で、過去10年間、そして昨年度ともにトップを占めたのが「共同受注事業」だった。
 昨年度は、全体の3割を超える組合がこの事業を最優先の目標に据えている(過去10年間では27%)。
 しかも、例えば共同購入事業を主目的においている組合でも、共同受注事業をもうひとつの大きな柱に据えているケースもあり、潜在的には、集計結果よりも多くの組合で共同受注事業を考えていることが伺える。
 共同受注事業は、それぞれの組合員の持つ技術・経験、専門分野またはハードなどを組合に集積して、個々の企業では受注が困難な事業を受注していこうというものである。
 昨年度は、一級建築士などの設計監理を行う事業者が、それぞれの得意(専門)分野を生かして設計監理業務の共同受注を目指す組合が県内各地で生まれたほか、近年注目されているインターネットビジネスに関係した仕事の受注や、先にあげた古紙やペットボトルの回収業務を組合で請負うというケースなど、バラエティに富んだ組織化がみられた。
 共同受注事業が設立の中心となるケースは、ここ10年間の大きな流れであり、今後この傾向はますます強まりそうだ。
 昨年度の県内の傾向で、もうひとつ注目すべき点は、「研究開発事業」を目的とした組合が例年に比べて多く誕生した点だ。
 この「研究開発事業」には、異業種で組織化し、独自のテーマのもと、融合化組合として研究開発をすすめるケースのほか、素材の商品化を研究する組合などの研究開発型の組合が全体の16%を占め、共同購入事業と並んで事業目的の2位を占めた(全国では、6・5%で第四位:7年度実績)。
 このように、組合員の技術等を集積して受注可能な分野を広げ、受注量を拡大していこうという動きや、新商品開発等で新しい分野に事業を展開し、新たな受注を創造していこうという、県内中小企業の積極果敢な動きを昨年度の設立から感じることができる。

花盛り!
「異業種」による組織化

 ここで、どのような業種が組織化したかをみることとする。
 まず全国の数字を拾ってみると(平成7年度実績)、1位は「卸・小売業」で全体の28%。県内の過去10年間の数字をみても「卸・小売業」がトップ(25%)となっている。
 しかし、昨年度の本県の数字では、「卸・小売業」は、構成比16%で第3位。これにかわって、全体の26%を占めた「異業種」が第1位となった。
 この異業種組合には、当然“融合化組合”が含まれるが、これ以外に、組合員から調査分析等を受託する組合や、将来高速道路通行料金の別納制度の実現を目指す組合、さらには、異なる分野のコンサルタント業者で組合をつくり、まちづくりなどのコンサルタントの受注を目指すもの、人材開発に力を注ぐ組合など、異業種によって多様な組織化が図られた。
 この点は、昨年度の傾向をみるうえで注目に値する。
 また、建築設計業者など、設計監理業を行う事業者の組織化が目立った点も、昨年度の大きな特徴のひとつだ。
 昨年度は、県内各地で五組合が誕生しており、この大半が共同受注を目的に組織化された。 

組合員数の平均は15人
出資金は290万円

  8年度は、450近くの事業者が参画し、組合が設立された。
 ちなみに、昭和62年度から昨年度までの10年間で、組合の設立に参加した事業者は、延べ8800近くにも及ぶ。
 昨年度における一組合あたりの平均組合員数は、15人。6人〜10人の幅が最も多く、全体の約3割を占めた。また組合員が最も多いところでも一組合あたり60人であり、構成メンバーが25人以下の組合が全体の8割以上を占めるなど、昨年度は、組合員の数では比較的小さくまとまっていたといえる。
 一方、出資金をみてみると、昨年度の一組合あたりの平均出資金額は、294万円
(一昨年度は326万円)。出資総額が150万円以下の組合が全体の五割強を占めた。度は326万円)。出資総額が150万円以下の組合が全体の5割強を占めた。 

グラフの目
今年度の設立の特徴を
4つの視点からグラフ化してみた。

●主要事業            ●業 種

 

●出資金            ●組合員数

 

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 中小企業静岡(1997年06月号 No.523)
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