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特 集

 統一商標「駿河湾 桜えび」で差別化の徹底はかる 
 県桜海老加工組合連合会



▲「ふじのくにしずおかシーフード
 フェア」では、新装ののぼりで、
 『駿河産桜えび』をPRした。


▲ 「消費者に安全・安心をお届けしたい」
 と県桜海老加工組合連合会の
 安部亥太郎会長。
 地域特産品の認知度を高めようと行政や業界団体などを交えた様々なイベントが花盛りだ。
 さる十一月四日、五日の二日間。東京都江東区有明の東京ビッグサイトで農林水産省と財団法人日本農林漁業振興会の共催による「実りのフェスティバル」が盛大に開催された。
 農林水産業界や食に対する国民の理解を深めるため、都道府県、中央・地方の農林水産団体等の協力を得て実施されたもので、二日間の来場者は、およそ四万人。初日は、秋篠宮両殿下が訪問され、お茶やわさび、桜えびなどの特産品が並ぶ静岡県のブースも視察され、お声をかけられた。
 続く十一月八日には、東京都千代田区のホテルグランドパレスで「ふじのくにしずおかシーフードフェア」が開かれた。静岡県や県内の水産関係団体などで構成される水産王国トップセールス事業実行委員会の主催によるもので、本県の高品質で多彩な水産物を首都圏のバイヤーたちに売り込もうというのが狙いだ。展示・試食・商談会が主な内容で、カツオ、マグロ、アジのひらき、桜えび、しらすなどのほか海洋深層水関連商品や地酒などが所狭しと並んだ。
 県桜海老加工組合連合会が出展したのは、もちろん全国ブランドの確立をめざす駿河湾産桜えびだ。
「特に今年は“生”の桜えびを使って、できたてのかき揚げを食べてもらった。風味、色、味。どれをとっても桜えび本来のおいしさを引き出せた」と同連合会の安部亥太郎会長は満足げな様子をみせる。
 同業界にとって、首都圏への出展の狙いは二つ。一つは、桜えびの知名度向上だ。静岡県内では誰もが知る桜えびだが、一歩県外へ足をのばすと知名度や食卓への浸透度はもう一つの面も。「例えば、東京築地のあるもんじゃ焼き店から、小えびという名前で注文が届くことがある」と安部会長は表情を曇らせる。
 そして、もう一つは「他産地との違いをPRしたかった」という点だ。近年、台湾など安価なアジア産の桜えびがアウトサイダーの間で大量に出回っている。ならば、味や風味はもちろん、色付きなど見た目の違いなどをバイヤーに直接PRしようというわけだ。
 こうした精力的な出店活動と平行して、いま同連合会で一つの計画が具体化されつつある。駿河湾ブランド定着のための商標登録である。連合会に加盟する由比町桜海老商工業協同組合、蒲原町桜海老商業協同組合、大井川町桜海老商業協同組合の三団体による新たな連携事業として注目される。
 統一商標は「駿河湾 桜えび」。その背景には、外国産との差別化によるブランド力の強化という明確な課題がある。というのも現在、桜えびは加工地の表示こそ法で義務付けられているものの、産地表示の義務はない。したがって、例えば台湾産であっても県内で加工した場合、表示上は国内産として流通してしまう矛盾がある。商標登録は、そうした紛らわしさを一掃すると共に、消費者に対し品質や安全・安心面を保証するブランドとして広く認知度を高めていこうとするものだ。これを機に組合員の品質改革にも取り組んでいく考えだ。



中小企業静岡(2005年12月号No.625)