特 集 
 凖特集 
 視点・指導員の現場から 
 「くみあい百景」 
 編集室だより 




食育が企業の繁栄につながる

 先の衆議院選挙における自民党の政権公約(マニュフェスト)のひとつである「食育基本法」が議員立法により今国会に提出され、制定される予定である。
 「食育」という言葉は比較的馴染みは薄いが、明治時代の料理研究家で小説家でもある村井弦斎氏が明治二八年、著書「食道楽」で「食育論」を紹介したのが初めとされている。同書では、体育の根源は食物にあり、知育の根源も同様に食物にあるから、体育や知育よりも、まず食育が大切であると主張している。
 その一一○年後の今、食のあり方が、かつてない危機感をもって問われている。子供や若者たちは朝食を抜き、偏食や食べ残しは当たり前。夜は一家団欒もなく個食が増えるなど、食生活の乱れは収まる兆しさえない。その結果、生活習慣病である肥満や糖尿病、骨格の弱体化などに見られるように、子供たちの健全な成長は阻害され、人間活力の減退や混乱につながってしまっている。この傾向は、若年層だけに止まらない。例えば、三五歳から六五歳の実年期といわれる世代に増加する原因不明の体調不良や早死である。平均寿命は近い将来五○歳台になるとの指摘もあるが、平均寿命と健康寿命との乖離も顕著になってきた。
 これらの現象は、将来、産業界に対しても重大な影響を及ぼすことが懸念され、見逃してはならない深刻な問題として認識する必要がある。次代の企業活動を担う若年層がこうした不安定な状況下にある上に、さらに、少子化現象が拍車をかけ、将来の就業人口の減少と企業活力の低下に直面したとき、企業としての永続的・安定的繁栄に向けた確固たる展望は見えてこない。
 こうした課題を解決するには、教育現場だけに依存するのではなく、全産業をあげて地域・教育機関と連携を図り、食育を中心とする若年層の健全な心身育成に向けた対策を協議することが望まれる。それこそが、二一世紀に生きる企業に課された責務ではなかろうか。
静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2004年6月号 No.607)