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 編集室だより 



指導員の現場から
作業現場の見直しを!!



 県内の中堅・中小企業の設備投資が三年ぶりに増加に転じるという新聞記事を目にした。
 確かに、最近は、私共の各種の経済指標の調査データを見ても、ここ数年と異なる動きが見られつつある。
 しかし、中小企業の作業現場にお邪魔してみると景況が定まらない、定まらないことが当たり前の状況である。特に、ものづくりの現場は企業によってその動きの格差が著しい。
 私共は、企業のものづくり現場の作業改善を支援させていただくことも多いが、お手伝いをしていて、幾つか思うところがある。
 一つは、経営者も現場管理者も、作業者に対して明確な指示を与えていないのではないかと言うことである。取引先の納入形態、価格、品質管理の要求が変わる中で、作業者を納得させての改善指示が出来ない。日々のイレギュラー発注や設計変更に追われ、不良品を出し、クレーム対応をするという悪循環の中にいないか。企業における改善マン・改革人材の育成を疎かにしてきていないかである。
 二つ目は、自社の文化を大事にし過ぎていないかである。あるコンサルによればどの企業にも独自の文化があり、尊重してものごとを進める必要があるとのことである。しかし、我々が、ものづくり現場の改善取組みの提案をすると、大多数の経営者は、自社の文化を壊されないかをまず心配されるようである。現場責任者となると、自分がやってきたことの全面否定になるのではと考える。だが、他社と同じようにやっていては、生き残っていけない、他人の言うことも聞いてみるのも手である。工場へ入ると、様々な工作機械や冶工具が大事に置かれている。丁寧に使われてきたことがしのばれる。しかし、広いスペースに使われない機械が置かれ、作業者は離れ小島で仕事をしている。仕事が少ないと、益々現場の活気が感じられない。バブルの時代のレイアウトや作り方のままでやっていないか考えていただきたい。
 三つ目は、欲張りすぎていないかである。ものづくり現場の改革に取組もうとする意欲ある中小企業経営
者は、様々な方々に相談したり、専門と言われるコンサルタントの支援を受けられている。しかしその多くが、体系的なものの構築を目指したり、理論的なものの理解、診断に留まるもの等である。さらには、課題全てをこなそうとする。あるいは期待される。今最も解決すべきテーマをまず、こなし成果を出すことであ
る。
 今ものづくり現場では、少ロット化や特注品受注などの場面で手作業技術、例えば、ハンダ付けや溶接等の基礎的な技術が見直されることもある。このような場面での作業教育の出来る専門の人材と連携し、我々も取組んでいるが、的確なタイミングと分かりやすい支援を心がけ、組合の中で、これまで以上に、きらめく中核企業が出てくるようお手伝い申し上げたい。
(木村通利)



中小企業静岡(2003年11月号 No.600)