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中小企業向け金融システムを

 一年ほど前、県内のある中小運送業者が倒産した。会社整理の段階で分かったことだが、借入金の総額は一億五千万円近くあり、そのうち金融機関からの借入は約一億二千万円。その他に知人などからの借入もあった。問題は借入の中に金融業者からのものが千三百万円ほどがあり、金利が年間で五百万円を超えていたことだ。つまり、実質金利は年率で実に三十%を超える勘定になる。
 一方、金融機関からの借入の約半分は保証協会付きでもあり、銀行金利は二%台後半で、業者金融の十分の一以下である。それだけの支払金利を払いながらも、この中小企業者は過去五年間、社長や従事している家族などへの給料を半減するなど、涙ぐましい経費節減努力などで凌いできた。
 結論を急ごう。もし、もしもであるが金融機関からもう一千五百万円の借入ができれば、金利負担は年に四百五十万円ほど軽減されることになる。当然そのカネは、新たな設備なり、キャッシュフローに活かされたわけである。勿論、倒産のすべての責任はトップである経営者にあるのだが、私が思うに現行の金融システムを“経営実態に合わせて改善”することによって、再生され、活性化できる企業はきわめて多いと思う。
 そこで金融システムについて若干の所感を述べてみる。ひとつは有志により中小企業者自らが「日本振興銀行」をつくることが具体化したことだ。さらに、東京都も中小企業を対象とした新銀行構想を発表した。これらの銀行は、金利五%前後を中心とした“中金利バンク”である。
 要は、何十兆円の規模を誇る巨大銀行から信用組合に至るまで、市場原理に基づく金利競争や金融庁の中小企業の実態から、かけ離れた検査マニュアルが、弱者ではあるが“高い可能性を秘めた中小企業の芽”を無残にもつんでいることだ。
 私は保証協会の料率を大幅に自由化するなどの改革だけでも、必ずや救われ、急成長する中小企業が出現するであろうことを確信している。

静岡県中小企業団体中央会・会長 


中小企業静岡(2003年11月号 No.600)