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立ち上がれ中小企業
〜構造改革の中で、あらたな飛躍へ〜

東洋大学経済学部 教授
松原 聡 氏

講師略歴
1954年11月生まれ
 1984年筑波大学大学院博士課程修了
 東海大学講師・助教授を経て1996年東洋大学
 経済学部教授に就任、現在に至る。専門:経済政策
 小泉内閣「郵政三事業のあり方について考える懇談会」
 委員、特殊法人情報公開検討委員会参与、
 東洋大学大学院主任教授などを歴任。
基 調 講 演



 構造改革の必要性、つまり今までの構造を壊していくべきだとの方向性は見えているが、創るべき新しい経済・社会は示されていない。それにどう政府や自治体が関わっていくかは示されていないし、何より中小企業自身が、その前提となる変化をもう一度、見極めることが必要である。
 今回は、二つの問題にしぼり、言及していきたい。

再認識したいIT革命の影響

 既に語り尽くされた感があるが、最初にあげたいのがIT革命である。
 私がIT革命が本当に革命だなあと思う点は、ずっと続いてきた相対取引、つまり売り手と買い手が出会うという原則が崩れたことである。
 出会うためには市場ができなければならない。商品が多様化したときは、その場はデパートのように大きくなければいけない。人がたくさん集まるところにしか設置できない。
 インターネットの時代になると、売り手と買い手が時間と場所に全くこだわらない。どこにHPを置いてもかまわないし、二四時間アクセスできる。
 ソニーのプレイステーション2の例では、初日に七五万台を店舗で、二五万台はネットで販売した。従来の卸・小売店は四分の一を今までいなかった敵に市場をとられたわけである。
 これからはネットにのる物か、のらない物かを分けて考えてみることが重要だ。プレステの例では生産、流通部門は残ったが、音楽のようにすべてがネットにのる物もある。映像もしかり。
 完全にインターネットにのる物を考えていくと大変な変化で、証券業界でさえ、支店をたくさんもつ大手と二〜三支店程度の中小もホームページ上では全く対等。むしろ支店と優秀な営業マンをたくさん抱えていたことが高コスト体質になり、対等どころか逆転する可能性もある。

人口減少の衝撃

 もう一つの大きな変化は少子・高齢化である。二〇〇五年〜二〇〇六年頃から日本は人口減少時代に入る。人口自体の減少、その過程に高齢化の問題があり市場は激変している。こうした激しい変化の時代は、五年、十年と同じビジネスモデルでやれるかは疑問。逆に言えば、同時にビジネスチャンスの時でもある。
 一番大切なのは、どうすれば新しいビジネスモデルを次々打ち立てていけるか。知恵の出し合いの時代でもある。
 構造改革はやらなければならないが、それは民間の活力が生かされて、日本全体がもう一度知恵を産み出すための過渡期であるとの見方をしている。
 最後は、民の力にかかっている。


中小企業静岡(2003年11月号 No.600)