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政治家も決算報告書を

 まさに大地と呼ぶにふさわしい広大な国土に、十三億人もの人口をかかえる超大国中国。事実上の一党独裁とはいえ、文化大革命後の経済面での自由化(資本主義化)を中心とした変貌ぶりと異常ともいえる経済発展は“凄い”の一語につきる。
 その中国で最高幹部が、そろって一世代もの予想以上の若返りを実現した。私はその最後の人民大会での朱鎔基首相の発言に、大いに注目した。
 彼は自分がリーダーとして指揮してきた大躍進のなかで、その実績を誇ると同時に貧富の差などが拡大したことを明確に認め、四つの点を自ら反省して評価を高めた。
 私も大国のトップが退任する時に、率直に自己評価を打ち出したこの事に感銘を受けた。私は寡聞にして政治家が退任する時、自らの“負の政策”について言明した人を知らない。否、一人だけ私の脳裏に焼きついて離れない政治家がいる。
 それは、元静岡県知事竹山祐太郎氏である。竹山知事は退任に当たり、静清庵地域の畑灌事業の行き詰まりを予見し、自分の政策判断の誤ったことを心残りとして最後の記者会見で公にした。畑灌事業は、富士川で発電などに使われた水を蒲原から興津にかけてのみかんや茶畑の灌漑用水に活用し、将来生活用水に事欠く恐れのある、清水地区のことも視野に入れた、大構想であったといわれる。知事職としては希有の勇気ある発言として記憶している。
 ところでわれわれ経営者の評価は、決算書に“利益額”という恣意的判断を許されない、具体的な金額によって明確に表示されるため、最近ではいとも簡単に首がとぶ経営者も多い。
 これからの政治家は、首長だけでなく各議員も自己在任中の活動状況のマニフェスト(自己評価の説明書)を、選挙民に随時明らかにすべき時代に入ったことを、この二人の先駆的政治家が強く指摘していると私は思うがどうだろう?

静岡県中小企業団体中央会・会長 


中小企業静岡(2003年 5月号 No.594)