道は必ず拓ける!
数年前、県内にある中堅の自動車学校の経営が行き詰まった。この業界もご多分にもれず少子化の進行によって、売上げの基となる生徒数が年を追うごとに減少しているという絶対的な構造問題をかかえ呻吟している。
そうした外部要因だけではないが、経営破綻寸前で、倒産必至の状況に追い込まれていた。
実は、この企業を引継いだ会社が自力で再生し、この三月期には見事な業績の決算をした。
この新会社は、元役員と労組員を中心とした従業員が参加した共同出資会社であることが最大の特長であった。したがって、すべてをガラス張りの公開経営を基本としている。仕事の性質上、繁閑の格差が激しいため、繁忙期には社長自らが陣頭に立って、生徒のための送迎バスの運転もするなど、一事が万事、全社員が一丸となった体当たり経営に徹してきた。
また、閑散期には費用はかかっても東京や名古屋などの都市圏からの合宿生受入れの仕掛けを成功させるなど、数々の新機軸を展開するなどして業績を伸ばしている。
さて、金融機関のデータによれば、今六〇%以上の企業が赤字経営を余儀なくされているという。
もちろん、どの企業も黒字経営をするために努力をしているのだが、全力をあげてがんばっても、なお、不可抗力的な外部要因によって悪い成績となっている企業の多いことも事実である。
だが、しばし待て!経営者と従業員が現状に強い危機感をもち、一丸となって渾身の努力をすれば道は必ず拓けてくる――私ども中央会が指導に若干の関わりをもった、この中小企業再生の実例は、そう物語っているように思える。
私は思う。経営には打つ手は無限であるはずだ。
そしてこの事例から、「企業は人なり」を改めて実感させられた次第である。
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