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▲微生物が漂う炭素繊維
の藻場に集まる小魚


▲環境保全の必要性
を語る関根理事長

藻場で多くの小魚を確認


 実験は、組合設立の昨年六月からスタート。セラミックス、自然石、コンクリート桝(ます)の三種類の基質(土台)に、それぞれ炭素繊維をくくり付け、十月の初めまで水深五〜一〇メートルの砂場に投入した。その結果、はじめに投入したセラミックス・自然石を基質とするエリア、一〇〇平方メートルの区域の内と外では、魚の目撃数が多い月で一八〇倍、少ない月でも、一〇倍の違いが出ている。炭素繊維と基質により、砂場が魚にとって、住みよい環境に変化しているようだ。
 さらに、炭素繊維に、藻類が発生、本物の藻場に変化する可能性も出てきている。

研究は産学共同

 炭素繊維を何故、微生物が好むのか。「炭素材と生物のなじみの良さは昔からよく言われてきました。しかし、その理由はよく分かってはいないんです。微生物の中には、炭素を好む『好炭素菌』が多く、自然界から様々なエネルギーを受け、これが、超音波や微生物を活性化させているらしい」と関根理事長が話す。
 微生物が炭素を好み、環境改善に役立てようとの研究には多くの機関が取組んできた。今回、組合が取組む研究も、NEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)の助成を受け、大学の研究者グループが、炭素繊維と付着微生物による淡水浄化研究に取組み、高い評価を受けたもの。
 今回、組合の取組みにあたっても、積極的に大学の支援を受けている。具体的な器材の開発作成は、組合員が担当。大学には、データの分析等を通して、研究の基本的な方向付けのアドバイスを受けている。実験の結果を大学側は、人口藻場の付着生物が、有機物を供給するという意味で自然界の藻場と同じ働きをしているとみている。

研究は自主性重視

 メンバーのほとんどが研究開発型の企業で、研究開発に取組む姿勢にも「すじ」を通す。「新規分野の研究・開発に組合で取組むというと、補助金ですか?といわれることが多い。初めから補助金では、うまく行かない。自分で金を出す人を集め、出来ることからやる。結果として補助が付く」研究型組合の姿を理事長が話す。
 さらに、理事長は「研究の成果は、個人で活用するレベルを大きく超えている。地域や環境問題全体で考えるべき、漁業組合、農水省等の団体、行政などと連携して、今後に活かしたい」と夢を語る。炭素繊維が水質浄化に大いに有効であることは、ある程度実証されてきた。これからは、より効果的な炭素繊維の形状、基質(土台)の材質・形について様々なケースを想定して、地域にあった素材の研究を進めていく。


中小企業静岡(2001年 1月号 No.566)