ネットサーフィング
富士の叫び
フラッシュ
特集
REPORT
ネットワーク
展示会情報
組合百景
読者プラザ
編集室だより

特集
平成10年年度 組合設立白書



共同受注が主役の座に


 様々な展開を見せる組合事業…。しかし、十年度に限れば、主役は完全に「共同受注」だった。二一組合中十二組合が主要事業に据えている(受注斡旋も含む)。
 かつての主流だった業界代表組合、共同購入、金融事業等に対するこの十年間の大きな流れとして、昭和六三年の融合化法誕生以来の異業種による研究開発組合の設立などと並んで、建設業関連業種を中心とした共同受注事業の進展は知られるところである。
 共同受注事業については、徐々に業種に広がりをみせるとともに、近年は各得意分野を活かした異業種構成で受注を目指した市場開拓型の組合も急伸しており、主要事業別では各年度のトップにあげられることが多くなった。八年度三一組合中十組合(一位)、九年度三一組合中六組合(研究開発事業と並んで一位)、といった具合である。ただし、各年度の全設立組合の中の比率でみれば、三割程度を占めるに過ぎなかったのに比べ十年度の共同受注事業組合の比率は圧倒的である。
 その内容をみると、同業種組合の場合は県営団地等の建具工事、市発注の道路・公園・河川の維持管理、公共建物等のネズミ・害虫駆除、市や村の水道関連工事など、官公需を視野に入れたものが目を引く。小笠山運動公園競技場、国際園芸博覧会などの大型プロジェクトに付随する業務をターゲットにしたものもある。建具業者の間では、各地区で公営団地の分離発注をにらんだ設立の準備が進められている。
 異業種構成で受注や斡旋を目指すのは三組合。静岡集合住宅供給事業(協)は、建築業者、不動産業者、税理士ら六人が事業用建築物の建設だけでなく、資産運用の相談から入居者ニーズの動向、入居後の管理体制まで卜―タル的なサービスを提供することで受注拡大を図ろうというもの。静岡県木の住まい事業(協)は建築工事−建具、内装等関連業者が静岡県産の木造住宅の共同受注に特化している。(協)ファンタジアはライフスタイルが変化する中、旅行業者とイベント企画業者が手を組み、海外挙式・披露パーティなどブライダルイベントを個々の要望に沿った形で提供していく。
 いずれもそれぞれのノウハウを相互に供給し合うことで、より高度な、細かな要求応え大手との差別化を図っている。
 共同購入事業は、取り組む数の上では十二組合と多いが、比較的扱い数量が少なく、かつてのスケールメリットを求めた「主役の座」からは転落し、二次的な共同事業にとどまっているケースが多い。

影を潜めた設備投資

 共同受注が主軸となり設立が進められたことと並んで際立った点がある。共同生産、加工、保管など工場、機械設備、倉庫等の共同施設を伴う事業を目的とする組合が無かったことである。あえて設備投資を伴うといえるのは共同配車を行うために情報機器を導入するサテライトロジスティックス協組(貨物自動車運送業者・十五名)程度。同じ景気低迷の中でも前年の九年度には計画段階のものを入れると共同冷蔵倉庫、食品生産設備投資などが三件(いずれも衛生管理の強化・徹底を図っている)、物流センター構想一件、廃棄物の処分場の確保や建設残土のリサイクルを目指すものが三件あったのに比べ、その差は歴然である。
 特に建設残土・廃棄物の処理やリサイクル事業はこの数年一〜三組合がコンスタントに設立され、一つの流れをつくっていたものが中断された形となった。もちろん、需要が無いわけではなく、むしろ高いといえるが、土地の確保や周辺住民の同意などの問題が進まないことと資金繰りの問題からの先送りが多い。他の設備投資を伴う事業も将来展望の難しさから様子見といったところ。こうした組合の停滞は相対的に共同受注組合の増加を浮き立たせる結果となった。また、なお増加している継続相談中の共同受注を模索するグループにあっては、受注から分配体制まで最も事業者間の調整を要する事業の一つでもあることから意思統一までに時間を要し、設立準備を進めている件数に比して年度内の認可組合数が減少した一因ともなった。


中小企業静岡(1999年 6月号 No.547)