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「経営」


「見落としがちな西暦2000年問題の側面」
 
トップは法的なリスクの認識も
加藤経営情報研究所 所長     
中小企業診断士、システムアナリスト

加 藤 忠 宏

 静岡市鷹匠2-10-6
TEL・FAX 054-205-3320
E-mail:katoo@quartz.ocn.ne.jp
http://www.tokai.or.jp/info/bnn/home/home.htm




■最近、コンピュータの西暦二〇〇〇年問題が取りざたされ、技術的な問題や想定される事故例などがよく紹介されています。
 我が社でもその対応を進めている段階ですが、対応が不完全な場合、法的な側面などからも経営者の責任を問われることがあるという話を耳にしました。どういったケースがあるのでしょうか。
 また、他に見落としがちな問題等がありましたら、併せてお教えください。


■問われる経営者の責任

 まず、あなたが経営者として西暦二〇〇〇年問題の責任を問われるケースにお答えいたしましょう。

●PL法(製造物責任法)

 私の最も恐れているシナリオがPL訴訟です。このパターンには二つあります。

ケース一:工作機器メーカー

 工作機器にはマイコンが大概、内蔵されています。実はこのマイコンが西暦二〇〇〇年問題を発症する可能性を秘めているのです。
 プログラムは無体資産なので例え西暦二〇〇〇年問題を発症しても通常ならばPL訴訟を受けることは無いのですが、ハードウェアと一体となった工作機器などは製品とみなされます。したがって、西暦二〇〇〇年にシステム停止や誤作動による労働災害が発生するとPL訴訟が起こる可能性があります。

ケース二:出庫記録の削除

 PL訴訟の時効は製品出庫から十年です。したがって、製品出庫から十年はいつどこからPL訴訟を起こされるか分からないので出庫記録を保持しておかなければなりません。
 しかし、西暦二〇〇〇年問題によるコンピュータ誤作動でこれらの記録が失われる可能性だってあるのです。もし、このようなときに海外からPL訴訟を起こされると悪質な証拠隠滅とみなされ、相当な損害賠償を求められることにもなりかねません。

●ソフトウェア業者

 あなたがソフトウェア業者の場合には、納品したプログラムに不備があって、そのプログラムやシステムが西暦二〇〇〇年問題を発症したとします。このような場合、あなたは民法の定めるところによる瑕疵担保責任を問われることになります。
 瑕疵担保責任とは、完全性を求められるシステムで西暦二〇〇〇年問題を発症した場合、完全義務の不履行があったとされる問題です。このような場合、システムが完全に西暦二〇〇〇年問題に対応するまで、あなたは無償でユーザーに対応しなければなりません。また、この規定は、あなたが西暦二〇〇〇年問題修復プロジェクトを受注した場合も同様です。
 ただし、瑕疵担保責任はシステムの検収・引渡しから一年以内なので、一年を経過したシステムはこの範疇外となります。ただし、瑕疵担保責任は問われなくても法的には債務不履行という規定があって、責任の回避はなかなか困難といえます。



中小企業静岡(1999年 2月号 No.543)