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「法律」







「下請法の運用について」
 
多い担当者の理解不足による違反行為
 
公正取引委員会事務総局中部事務所     

下請課課長  
目 黒 征 守

 名古屋市中区三の丸2-5-1
TEL 052-961-9421
http://www.jftc.admix.go.jp



■下請法は、親事業者と下請事業者の取引を公正にして、下請事業者の利益を保護することを目的としていると聞いております。この法律の骨子をお教えいただくとともに、最近の事例などから留意すべき点をご指示ください。

■下請法の制定

 下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といいます。下請代金の支払遅延等の行為は、独占禁止法に違反するおそれのある行為ですが、独占禁止法の処理手続には相当の期間を要し、ひいては下請事業者の利益にならないことも考えられることから、簡易な手続で処理を行うために、独占禁止法の特別法として昭和三一年に制定されました。

■下請法とは(適用範囲・義務・禁止事項)

 一口に下請取引といっても様々な形態があります。下請法では簡易な手続を行うために適用範囲を資本金と取引内容の両面から定めており、この二つの条件が重なった取引に下請法が適用されます。すなわち、
一 資本金一億円超の事業者(親事業者)が、資本金一億円以下の事業者又は個人(下請事業者)に対し、物品の製造・修理を委託する取引
二 資本金一千万円超一億円以下の事業者(親事業者)が資本金一千万円以下の事業者又は個人(下請事業者)に対し、物品の製造・修理を委託する取引に下請法が適用されます。なお、建設業の下請取引についてはこの法律は適用されません。
【親事業者と下請事業者の範囲】


 下請法では、親事業者に対し、次の四つの義務を課しています。

一 注文書の交付義務
二 下請代金の支払期日を定める義務
三 下請取引に関する書類の作成・保存義務
四 支払遅延が生じたときに遅延利息(年率十四・六%)を支払う義務

 また、親事業者がしてはならないこととして次の九つの禁止事項を定めています。

一 下請代金(単価)を決定するときに通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めること(買いたたきの禁止)
二 下請事業者に責任がないのに、発注を取り消したり、納期を延期すること(受領拒否の禁止)
三 下請事業者に責任がないのに受領後に返品すること(返品の禁止)
四 下請事業者に責任がないのに下請代金を値引きして支払うこと(減額の禁止)
五 定められた支払期日(受領後六〇日以内)までに下請代金を支払わないこと(支払遅延の禁止)
六 下請事業者に対しサイトの長い手形(繊維業は九〇日超、その他は一二〇日超)を交付すること(割引困難な手形交付の禁止)
七 下請代金の支払よりも前に有償支給原材料の代金を相殺すること(有償支給原材料の早期決済の禁止)
八 正当な理由がないのに指定した商品などを下請事業者に購入させること(購入強制の禁止)
九 下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁に下請法違反の事実を知らせたことを理由に、取引数量を減らしたり、取引を停止すること(報復措置の禁止)

 これらの禁止事項は、たとえ下請事業者の了解を得ているからといって違法性の認識がなくても違反することになるので注意が必要です。

■最近の違反事例

 最近の違反事例としては、下請事業者であるのに一般の納入業者扱いとしていたことによる支払遅延(手形満期相当日に現金払。例えば毎月末日締切、翌々々月末日支払など。)、引き下げた新単価を合意日前に発注済みのものについてまでさかのぼって適用したことによる減額などがあります。前者については、下請事業者とその他の納入業者との区別が十分徹底されていなかったために、また後者については、担当者が下請事業者の了解を得たから問題ないとの認識があったために違反行為をしてしまったものです。

■社員教育と下請事業者名簿の作成を

 昨年度に公正取引委員会が勧告・警告を行った件数は、全国で一、三五一件に上っています。違反行為をした原因として多いのは担当者の下請法への理解不足です。違反を防ぐためには、担当者に対する下請法の教育が必要で、特に担当者が人事異動により変わった場合は新たに研修を行うとよいでしょう。また、下請事業者とその他の納入業者とで支払条件などが異なる場合は、下請事業者の名簿を作成し、定期的に見直すことも必要です。
 下請法及び下請取引に関する質問・相談などございましたら公正取引委員会までお寄せください。


中小企業静岡(1998年 10月号 No.539)