そんな細江町の東部、浜松市に近い中川地区にあるショッピングセンター“ベル21”は、中川商業開発協同組合が運営する共同店舗である。
組合は、細江町内で小売業を営む19人によって平成元年に設立され、翌年にベル21をオープン。浜松や天竜などの周辺市町村からも買い物に訪れる地域一番店に成長した。
人に優しい店づくり
入り口を抜けてまず目に飛び込むのが、幅10メートル、長さ60メートルと広いスペースをとった中央の通路。天井には大きな窓があり、自然の光が館内に降り注ぐ。また、樹木やベンチが置かれ、そこでは買物客がくつろぐ姿が見られる。
「のんびりと、散歩でもするように買い物を楽しんでいただこうというコンセプトで作ったショッピングセンターです」と石坂理事長が語る通り、スペースを効率良く使うことよりも、遊び心や余裕のある空間を優先した店づくりがうかがえる。
組合がもう一つ重視するのは、お年寄りや身障者に優しい店づくり。
「この地域は老人ホームなどの福祉施設が多いんです。こうした方たちに安心して買い物をしていただく環境を整えることが、地域に密着した店づくりということになると思います」(同)
車椅子で入店する人のために、入り口のスロープは緩やかにし、トイレには手すりを設けている。さらに店内の通路やレジのスペースも広めにとるなど、利用者への配慮が随所に見られる。
また、毎年“ほのぼのの日”と銘打ち、老人ホームなどの福祉施設の入所者を招いて買い物を楽しんでもらう行事を企画するなど、地域福祉への貢献に力を入れている。
樹木やベンチが並ぶ中央の通路
イベントは手作りで
主な共同事業はポイントカードとイベント事業。
オープン当初から行っている“ベルカード”は、買い物金額に応じてポイントがカードに加算されていき、たまると商品券と交換できるというもの。現在約35000人が会員となっている。
また、年に1回行われるカード会員の優待セールのほか、夏祭りや中央通路を利用した各種展示会などをイベント事業の一環として実施してている。
「お金をかけずに知恵を 夏祭りは駐車場を利用し、組合員や従業員が協力してゲームや夜店市などのアトラクションを行う。また、福祉施設の入所者の作品展、地域住民によるバザーなども開かれている。「ショッピングセンターは半分公的な施設だと考えています。地域の皆さんが交流し、楽しむための広場として利用していただきたいですね」(同)
この春、店舗をリニューアル
ベル21がオープンしたのは平成2年。開店初日には600台収容の駐車場が満杯となり、車の列ができたという。
その後、バブル崩壊により経済は停滞し、特に小売業者にとっては厳しい年が続いているが、組合の販売実績は、ほぼ毎年前年実績を上回り続けている。このあたりからもベル21が地域住民に必要とされてきたショッピングセンターであることが伺える。組合ではさらにサービスを充実させるため、この四月に店舗のリニューアルを実施。売場を拡大し、商品構成を充実させるとともに、身障者が気軽に買い物をするための設備も整えた。
「売上を伸ばすことも大切ですが、我々にしかできないことに力を入れ、オンリーワンのショッピングセンターを目指したいと思います」(同)
人とのふれあいを大切にしながら共同店舗を運営してきた中川商業開発協同組合。今後も地域住民に愛される店を目指して営業を続けていく。 |