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クローズアップインタビュー

実行力で業界に“新風”
ユーザーの顔の見える距離でツキ板をアピール

静岡ツキ板協同組合
橋本卓也 理事長

「“突板”を “つきいた” と読め る人はほとんどいない。 業界として、PR不足を痛感していま す」。就任2年目、48歳になったば かりの若手理事長は、こう自省する。

ツキ板とは、樹齢150年を超え る良質な大径木を1ミリ以下の薄さ でスライスした化粧材を指し、突いて 削り出すことから“突板”と呼ばれ る。家具産地静岡は、家具職人らに よって大正時代からツキ板づくりが 行われていた発祥の地。全国生産量 の約3割を占める大産地でもある。

ツキ板は、住宅の内装材や家具調 度、楽器、自動車のダッシュボードな どに幅広く用いられ、高級感を醸し 出すために欠かせない部材だ。しか し、近年、木目調の塩化ビニールプ リント製品に押されつつあることに 危機感を強めた組合では、昨年はじ めて「静岡県住まい博」に出展した。

「エンドユーザーに触感や臭いなど を体感してもらうことで、天然素材 の良さを知ってもらうことができ、 予想以上の好印象を得ました」と手 応えを感じる。

「ツキ板は、塩ビ製品などの石油化 学製品と違い、製品に炭素を固定化 し、また生産において環境負荷がほ とんどないエコな製品。美しい木目 など天然素材ならではの風合いもあ る。ユーザーの顔の見える距離で“環境”と“こだわり”をキーワードに存在を強くアピールしていきたい」。

4月にツインメッセ静岡で開催された「全国優良ツキ板展示大会」では、従来の展示即売会と加工技術の審査会に加え、住宅用に新たなツキ板の使い方を提案してもらおうと“天然主義大賞”というコンペを企画した。

「塩ビ製品が品質を高めている中、今までどおりでは生き残れない」と静岡で全国大会を開催するにあたり強く実施を求め、実現させるなど、実行力で業界に新風を吹き込む。

父が興した有限会社駿河突板店の社長。父も理事長経験者だ。

4年前、父が急逝。跡を継いだ。大学卒業後、すぐに父について、ツキ板のイロハからきっちりと学んだのが大きかった、という。

「家具や木工業界では、後継者難による廃業が多いようですが、当業界では全国的に若返りが進んでいます。当組合の組合員四社のうち3社の社長は40代以下。全国9協組の中でもっとも人数の少ない静岡が、いちばん活気があるんじゃないのかな」と胸を張る。

こどもの頃から城郭に惹かれ、大学時代は「城郭研究会」に所属した。

「全国各地に出張した際、近くに城があれば足を伸ばします。見ているだけで和むし、歴史のロマンを感じる。後北条氏の石垣のない城は、とくに魅力的」と目を輝かせる。