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視点・指導員の現場から

今、求められる 経営者教育の充実

深刻化する人材確保・育成難5つの課題

業績好調に沸く大手企業を軸に雇用戦線は活発な動きをみせているが、中小企業では近来になく人材確保に苦戦している。

経営者から頂く相談内容も深刻かつ多様化しているが、概ね次の5つに要約できるようだ。

1.新規学卒者の応募・採用がない、少ない。

2.新規学卒者も中途採用者も職場定着が悪い。

3.現場監督者が育たない。

4.熟練者の退職が迫っているが、人材補充や技能継承がされていない。

5.経営者の片腕人材が見当たらない ―等である。

これら中小企業における人材確保は、縁故や中途者の応募が主で、企業の技術や仕事の特徴等を自ら発信することなく、具体的にどの仕事をどのようにする人材が欲しいかを明確にできないジレンマがある。また、特殊な専門性や技能をベースに様々な仕事を兼務し、自己完結、自己自立できる人材が理想であるが、これを育成する体系的社内システムが不十分である。

若手の育成では、上司や職場の中でのコミュニケーションが課題だ。20〜30代の同世代が少ない中で、共通の話題がない、仕事のやりがい、使命感、一体感がないなど孤立化も一部に見られるという。対して管理・監督者側も、若手に対するコミュニケーションの取り方に躊躇し、的確な指示の仕方や理解のさせかたがわからない等の悩みを持つ。

一方、熟練者の確保はどうか。昨年4月の高年齢者雇用安定法改正により、65歳までの雇用が義務付けられたが、熟練技能者の確保や育成は緒についていない。熟練者には健康な間は出社してもらい、後継者育成に注力して欲しいのが経営者の本音だ。だが中小企業では、一般作業者としての期待に加え、高齢者には自身が先輩の技術・技能を「見様見まね」で習得してきた意識が強く、マニュアルやゲームに慣れ親しんだ世代への指導に困惑する点も見逃せない。

経営者教育の充実を

経営者の交代期で重要なのが、彼らを支える分身の存在だ。先代からのこれら人材と密な連携がとれない、自らの片腕を見出すのが容易でないなどがネックとして存在する。

以上、述べてきたが、問題は、実は経営者にもある。企業経営の情熱を維持し、従業員との一体感を醸成し続ける意欲に欠ける経営者が散見されることである。有能な経営者でも、1人では、出来ることは知れている。取引先の動向に絶えず留意し、技術革新に努め、銀行との折衝に配慮し、かつ従業員の先頭に立ち、組織挙げての不断の取組みをしなければならない。企業が前進を果たすためには、組織一体の協力が欠かせない。その総括者が経営者であるが往々にして、他人やコンサル任せの経営者も散見される。

縷々、申し上げたが、様々な面で人材確保、育成が喫緊の課題であるが、中でも、経営者教育の充実、深化が一番の重要課題と推察される。組合事業でも、改めて力点を置く必要があるのではないか。 (木村)