企業の地域社会への貢献
いま世の中で起こっている事柄は、国の内外を問わず暗いニュースばかりである。そんななかで、心温まる話を聞いたので、紹介してみたい。
実は中央会では、毎週月曜に朝礼をやっている。
前回その席にゲスト・スピーカーとして元静岡経済研究所常務で、浜松大学講師の石野正治さんをお呼びした。話の主題は、薄皮まんじゅうで名の知れた、郡山市に本店のある柏屋という生菓子屋さんの経営手法に学ぶものであった。
しかし、私が注目したのは、もう四〇年以上も続けている、消費者と地元に密着した“企業メセナ”に関わる話であった。町に少しでも潤いを、という狙いで子供たちから詩を募り、一番に目立つ店のウィンドーに飾りつけた。この試みは“青い窓”と名づけられ、全国的にも評価された。
石野さんの紹介した、次の詩が私の心を打った。
それは小学六年生の“私の席”という題であった。
満員バスに おばあさんがのってきた
ポニーテールの女の人が
「すぐ降りますので」と席をゆずった
でも その女の人は次の停留所でも
四つ目の停留所でも降りなかった
私は胸がいっぱいになって
いつもより一つ早い停留所でバスを降りた
あのポニーテールの女の人
私の席にすわってくれたかなあ
私の記憶によれば、かつての郡山は、東北のシカゴと呼ばれたほど、犯罪の多い町の汚名があったはずである。
その町に、こんなにも心根のやさしい子供たちが、いっぱい育っていたことが嬉しかった。
私はフッと、世のなかが暗いのは、オピニオンリーダーたる中小企業の経営者にも、大いに責任があるな、と思わせるエピソードだった。
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