経営者が、人財をつくる
『やっぱり、監督の力量だナ!』ノーシードの興誠高校が県大会で、宿敵の浜松商業を倒し、優勝を決めた時の私の実感である。
望月監督は、奇しくも五十年前の昭和二十七年に静岡商業が選抜大会で初出場、初優勝の時、二年生ながらショートストップとして活躍し、全国的に注目された。以後、母校の専修大学の監督として東都大学リーグで優勝したほか、静岡商業を春夏三回も甲子園に導くなど、野球人としては、ナショナルブランドの人材で、その球歴には赫赫たるものがあり、野球王国を謳われた静岡県人の誇りでもあった。
六十六歳という年齢ながら昨秋興誠高校の監督に招請され、一年を経ずして学校創立以来七十年ぶりの快挙を成し遂げたことには、我々経営者として学ぶべき点が多い。
静岡新聞の記者によれば、何かの不祥事があったためか、静岡商業が夏の大会への出場を禁じられ、選手たちが失意のドン底にあった時、自ら練習試合の主審をつとめるなど、選手たちの心をシッカリとつかむ黒子役に徹していたこともあるという。興誠高校にきてからも、愚直にバンドなど基本動作を最重点に練習を組みたて、これが成功したといわれる。
私は改めて思う―組織(チーム)は指導者の存在がいかに大きなものであるか。甲子園で勝ち残った監督が、そのインタビューで『私を甲子園につれてきてくれた選手たちに感謝している』と語っているのを聞いて、その言葉の裏側にある、つまり茶髪が当然の社会風潮のなかで、坊主頭に徹する“若者”との人間関係の微妙な機微を見る思いがした。
近ごろの若い者は困ったものだ―経営者からよく聞くコトバだが、ワガママで無鉄砲にみえる青年も、指導者のあり様によっては、偉大な力を発揮するものであることを望月監督や甲子園から教えてもらった。
経営者たるもの、肝に銘ずべしか。
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