経済再生の主役は「まちの中小企業」
中小企業白書など、エリート官僚が書いたベンチャー拝礼の優等生的な作文ぐらいに思っている人が多いかもしれない。
が、しかし、今年の白書は一味違っているようだ。長い不況のなかではあるが、そのテーマに「まちの起業家」の時代へをかかげているのに同感であり、大賛成だ。
すなわち、地域に密着した小売業や外食、サービス等、街の界隈の、どこにでもあるような中小企業に、光をあてたことは注目に値する。
もう忘れかけていることだが、二〇年ほど前、太陽の落ちることなしといわれたあの大英帝国の経済は、重いイギリス病にかかり破綻寸前であった。また世界中の覇権を手中にしていたアメリカも、莫大な“双子の赤字”に苦悶していた。
白書はこの時、英米両国が企業減税、規制撤廃、開業支援などの振興策の結果、中小企業が牽引車となって経済再生を果たした先例をあげている。また、日本でもここ数年間、まちの中小企業が雇用創出などの主役として大企業の大幅リストラとは反対に、小規模企業だけで実に一九〇万人の雇用創出を果たしたことを紹介している。
両大国の困難を克服した指揮官は云うまでもなく女宰相のサッチャーであり、レーガン大統領であった。私は幸いにして東京で開かれたサッチャーさんの講演を聞く機会を得、改めて一国の経済の基盤は、中小企業という大きな土台であることを再認識し、我が意を得たりと思った。
さて、そうはいっても、中小企業の創業(転業)や起業家には、具体的な支援策が不可欠である。
そのひとつとして欠くことのできないのは資金であり、我々が従来から強く主張していた、銀行の「貸付先への格付け」に変化の兆しが出てきたことはありがたいことだ。
金融庁の査定マニュアルで「代表者からの借入金は自己資本とみなすとか、有能な後継者が会社に戻ってくる」など、中小企業特有の条件が具体的事例をもって企業の格付アップにつなげることなどが検討されている事実に、大いに期待する。
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