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事実は小説より…


 いまの日本は、あらゆる分野にわたって“構造変革”という大きな潮流に翻弄されている。つい数年前、金融ビッグバンなる新語が新聞などで報ぜられた時、大銀行がかくも簡単に倒産・崩壊してしまうことを、どれほどの人が予測できたであろうか。
 たとえ国家は潰れても、銀行が倒産することはない、世間は皆そう考えていた。
 しかし、今や長銀に代表される、目を覆うほどの醜態をみるまでもなく、“事実は小説よりも奇なり”を地でいく、異常な事態が現出している。
 それにしても、そうした激変の嵐が、自分自身を襲ってこようとは、夢想だにできないことであった。それと言うのは、五月十八日の日経新聞夕刊をみて、ビックリ仰天した。四段抜きの見出しに「ニッサン・フォークリフト売却を発表」と大きな活字が躍っているではないか。
 解説記事は、「日産自動車は、多角化路線を見直し、経営資源を自動車に集中するため、収益を挙げているフォークリフト部門を米最大手のナコ・マテリアル・ハンドリング社に二〇〇億円で売却する」旨を報じていた。
 実は、私は日産フォークリフト静岡販社の代表取締役であり、本社にも太い情報ルートを持っていたはずだが、まさに寝耳に水の出来事であった。
 この会社は、ニッサンリフト専門の販社だけに、米社との折衝しだいで、将来の会社経営が大きく左右されてくることは必至であり、いまその対応に追われている。
 卑近な事例を紹介したわけだが、このように自己責任の範囲外からの外部要件によって、企業の存立を根底から揺るがす事態が、ある日突然、我が身に降りかかってきても、動ずることなく即応できる体制を整えておくことが必須の時代であることを、お互いに確認しあいたいものだ。

静岡県中小企業団体中央会・会長


中小企業静岡(1999年 7月号 No.548)