特 集 
 「くみあい百景」 
 編集室便り 




人びとを支える相互扶助の“心”

 新潟県中越地方を襲った大地震は、週末のひと時を突然の恐怖に落としいれ、時間の経過とともに明らかになる被害の大きさや山間地における救援活動の難しさに、日本中が心を痛めた。
 私がまだ小学一年生であった大正十二年、死者行方不明十四万二千人という未曾有の大災害・関東大震災を安倍郡有度村の我が家で経験しているだけに、この悲劇は決して他人事ではない。
 中越地震の翌月、十一月十一日は、新潟市において計画されていた第五十六回中小企業団体全国大会を、復興に向けたわれわれの意気込みを示すためにも予定どおり敢行した。大会には本県から五○名をこえる代表者が参加し、被害を受けた中小企業向けに大規模補正予算を早期に編成しきめ細かい対策を求める特別決議を行うとともに、その実行を強く求めた。
 いま新潟では、厳しい被災状況を共に乗り越えようと地元住民が助け合いの生活を送り、全国各地からは温かな支援の手が続々と差し伸べられている。日頃、日本に手厳しい海外のマスコミも賞賛の念をもってこうした光景を報道した。
 私は、あらためて胸打たれるものを感じた。自己利益を優先し弱肉強食が当然といわれる時代の一方で、日本人の奥底に流れる相互扶助の“心”が人々を支え、よりよく生きようとする明日につなげている。まさに、協同組合の根本思想そのものである。全国で四万を超える組合の日常の活躍も、おそらく国民性の形成に少なからずの影響を与えてきたことであろう。
 現実をみても、きたるべき地震に備え運送業や設備業、燃料、食品、宿泊施設など多くの組合や業界団体と地域行政との間で、協力・供給・業務協定の締結がすすみ、協同組織に対する防災ネットワークや社会的貢献への期待は急速な高まりをみせている。
 静岡県中央会では一刻も早い復興を祈り、被災地への義援金の募集を行っている。各位の相互扶助の“心”に期待する次第である。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2004年12月号No.613)