特 集 
 凖特集 
 「くみあい百景」 
 編集室だより 



指導員の現場から
「コンプライアンス」一考



大企業だけの問題?

「コンプライアンス」というコトバが、メディアで注目を集めている。
 ある時は法令遵守という意味で使われたり、企業倫理との関連で論じられることもある。たとえば最近では、乳業・食肉メーカーによる「偽装」や自動車メーカーのリコール隠しなどの再発防止の一方策として目に触れることが多いので、詳しい方も多いと思う。
 ところで名のある大企業において、法令違反等による信用失墜のケースは枚挙に暇がないが、これらは大企業の世界のみで起きている問題と言い切ることができるだろうか。例えば、必要とされる許認可を取らずに事業を実施するなど、法令違反を犯した場合がそれだ。企業の大小を問わず、ある日突然、経営危機を迎えるということがないとは言い切れない。折りしも、内部告発者を保護する法律の制定を求める動きも出ており、今後は法的にも、現環境を「後押し」することにもなりうる。
 これに対し、大企業等においては、「ヘルプラインの確立」などが指摘されている。企業に潜む法令違反などの重要な問題を企業内部のヘルプライン(相談・通報窓口)で吸い上げ、企業の自浄作用を働かせて解決すべだという意見である。

監事の役割強化を

 さて、話を組合組織に移す。「コンプライアンス」「告発」に関連するご相談として多いのが、組合員同士、もっといえば理事とそれ以外の組合員との意見対立である。原因は様々である。融資問題や事業運営、決算内容や規約の運用など、感情論と利害得失に加え法の運用をめぐる意見の相違とでもいうべきか。
 内輪揉めがこじれて組合内部で処理できなくなったとか、少数意見のため執行部に聞く耳を持ってもらえない、といった内容である。対立がエスカレートした場合、本質が自社経営の根本にかかわる問題ともなれば、訴訟問題へと発展していく最悪の事態も想定しなければならない。
 組合に少数意見や執行部との対立意見を出した場合、数の力を頼るか客観的合理性や妥当性を明示しない限り、異論は黙視されがちである。本会に舞い込むご相談の中にも、その背景として「話し合いの場さえ与えられない」という根本的な問題を抱えるケースが意外に多いのである。
 そこで、再考したいのが監事の役割についてである。現状、組合法におけるの監事の役割・権限は、商法でいう監査役のそれと異なり、会計監査を通じての理事監督権に制限されている。したがって理事の職務執行に監査権限が及ばない以上、組合業務の適法性や妥当性について言及することはできない。
 長年の膿をためている組合が多いとすれば、組合の再強化を目的として、ヘルプライン機能を含めた監事の権限強化も一考の余地があるのではないか。
(高橋)



中小企業静岡(2004年7月号 No.608)