特 集 
 凖特集 
 「くみあい百景」 
 編集室だより 




求められる企業倫理

 三菱自動車グループの一連の不祥事は、業界を激震させた。日に日に明らかにされる予想外の事実に、ただ愕然とせざるを得なかった。
 きめ細かなマニュアルまで作成し、末端まで徹底させた隠蔽工作。整備点検項目にないという理由で、事故の要因といわれるクラッチハウジングに関する報告書からの削除。“指示回収”による水面下での修理等。スリーダイヤの輝かしいマークは、執行部の目先の利益を守るために、本来リーディング産業として果たすべき役目を放棄し、失墜した。たった一握りの経営陣によって長い年月を掛けて培われてきた社会的信用は、瞬くうちに崩れ去ってしまった。株主に対する見せかけの数字を取繕う為に、就任している間は都合よくいけばいいという短絡的発想に囚われ、耳障りのいい報告だけを取り上げ続けた結果である。
 製造現場の声が届かない。消費者の声に耳を貸さない。しかし、自分は会社のために行動しているという思い込み。そこに映るのは“もの造り”の原点を全く見失った姿である。より安全を、より安心を消費者に提供し信頼を得る努力こそが、企業倫理や市場優位性の根底を築き上げる。その原則に立って、多様化する消費者ニーズを把握し、さらに新市場の開拓や新技術の開発に挑む経営姿勢が求められているのである。
 製造物責任法(PL法)も、国際標準機構(ISO)も机上のことではない。近年、コンプライアンス、(法令順守)の経営が改めて議論されているが、見方をかえればリスクマネイジメントに対しての姿勢があまりにも疎かにされているからである。利益追求が全てという風潮への警鐘であり、経営者は確固たる企業倫理を持って、このグローバル化時代に挑む必要がある。
 これらは、企業規模の大小に関わりはない。日々積み上げていく生産現場と一体となって、常に一歩先を見据えるという経営姿勢が望まれているのである。それこそが今、組合が率先して取り組むべき課題といえるのではないだろうか。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2004年7月号 No.608)