流通変化で市場価格が低迷
魚種豊かな駿河湾を懐に抱く沼津市、そんな沼津の代表的産物といえば「アジのひもの」。
温暖な気候、駿河湾の浜風、東洋一の名水と言われる柿田川…干物造りに最適な自然に恵まれ生産高は日本一を誇っている。
商品化された干物は卸売市場に出荷され、市場委託販売という形で業者間を取引され、消費者の食卓に届けられる。
しかし近年の市場を取り巻く環境は、量販店の取扱量増加に伴う相対取引の増加、市場外流通の拡大、市場間競争の激化、仲卸業者の衰退等もあり卸売市場経由率が低下傾向にある。
加えて消費市場においては、粗悪品でも廉価なものが売れ筋となってしまい、追随する他産地と商品価値より価格競争で争う結果となり、市場価格は低迷し、売上の減少が続いている。
こうした市場形態の変化、売上の減少、干物そのものの商品価値の低下を危惧し、製造技術に自信を持ち、沼津の干物の品質の高さ、美味しさにこだわりを持つ加工業者五社により、平成十三年四月、直販を主体とした新たな販売戦略を展開する組合を設立した。
直販で貫く“こだわり”
組合事業は組合員の取り扱う干物の共同販売。販売形態は流通機構を経ない直販が主体。各種イベントへの参加、ホームページ上でのネット販売、観光地の土産物店への常時設置、中元・歳暮を扱うギフトショップでのセット販売等、多彩な販売形態を採っている。
大熊理事長は「今やらなければ後悔する、との皆の思いで組合を立ち上げた。各地のイベントに出向いての販売では、それぞれ代表者自らが消費者との対面販売を行っている。その場で焼いて試食してもらうんです。本物はこんなに新鮮で美味しいんだ、と言って皆さん買っていかれます。マネキンと違い質問も多く、脂ののっている魚の見分け方、焼き方等丁寧に説明できますからね。売上げ以上に沼津の干物の情報を受発信できることが大きいんです」と語る。
インターネットの販売でも美味しさへのこだわりを前面に押し出したホームページを開設している。一度購入すると再度というリピーターも多く、事業への確かな手応えを感じている。