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指導員の現場から
時代の狭間



 平成十一年十二月三日に公布・施行された改正中小企業基本法の制定により、中小企業政策が大きく変わった。旧中小企業基本法では、中小企業を弱者と位置づけ、画一的、底上げ的な施策が展開されてきた。二十一世紀を迎えた今日における中小企業は、我が国経済のダイナミズムの源泉として捉えられ、この中小企業観の転換に伴い、中小企業政策の理念も大きく変わった。
 「企業間における生産性等の諸格差の是正」から「独立した中小企業の多様で活力ある成長発展」に変わり、政策体系も「中小企業構造の高度化」「事業活動の不利の補正」から、「経営革新・創業の促進」「経営基盤の強化」「経済環境変化への適応円滑化」へと大きく様変わりした。
 従来、中小企業政策においては、大企業と比較して脆弱な経営資源の確保のための施策を「指導事業」として位置づけ、行政により直接、中小企業者を「指導」するとの考え方を基本として、そこに「指導員」が置かれてきた。商工会議所、商工会における「経営指導員」「記帳専任職員」「記帳指導員」、中央会にあっては「巡回指導員」「労働指導員」「商店街指導員」とに区分されているが、その実態は、一歩現場に踏み入ればあらゆる方面の指導に当たってきた。

質が問われる指導員

 中小企業者の抱える経営課題が多様化・高度化した現在にあっては、指導員個々の「資質」よりも、市場機能を発揮させた専門性のある民間能力活用が、より効率的となってきた側面も散見される。
 そこで、指導から支援に変わり、「支援事業の実施に際しては、民間専門家の活用を念頭に置き、中小企業が抱える経営課題に対し、一定の質のサービスをタイムリーに展開できる」よう、求める者と持つ者とをマッチングさせる環境づくりという使命の比重が増し、そのフィールドがかつては考えられない程の広がりをみせている。
 一方では、国や地方の財政難から、各種の団体において指導員に対する予算が減額され、指導員の数が減りつつある。現場では、課題の背景が複雑化し専門化が進み仕事量が増してきているため、人手不足となり、仕事の質が悪化していく。
そのため、多くの指導員がへまをやりかねない状況になりつつある。口先で将来の暗い見通しばかりを強調し、その結果の衝撃を過小評価していたのではないかという信頼性を疑われることを嫌う。最悪の事態を予想しつつ最善を願っていたと思われるほうが、その逆よりもいいという発想だ。
 空想の世界に生きるのではなく、バックグランド・ノイズを切り捨て、アクションあるのみ。指導員は、
批評家であってはならない。
中小企業に不足する経営資源を補完するため、幅広い活動ができるような知識や能力を身につけ、自己の質を高めなければならない。
(村田雄示)



中小企業静岡(2003年 8月号 No.597)