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 中央会研修会レポート

「少額債権の早期・確実な回収のために」

―少額訴訟セミナーより―

8月2日、静岡県産業経済会館にて本会主催の「少額訴訟セミナー」が開かれた。
講師は国士舘大学教授のおおや大矢やすお息生氏。
 民事訴訟法が改正され、平成10年1月からスタートした「少額訴訟制度」は、
『30万円以下の金銭債権について、誰にでも簡単に訴状が作れ、
原則一回一時間程度の審理で直ちに支払方法を含めた和解的判決を言い渡す』
といった画期的制度として注目を集め、多くの成果を出している。
 当日は、組合役職員、組合員企業の経営者、経理・営業担当の方々など、
当初予定を上回る参加者が、制度内容や実務の把握に耳を傾けた。



1.少額訴訟って何?

 施行後、一年半を経過していると言っても、まだ、「少額訴訟って何ですか」「このセミナーで初めて内容を知った」という経営者・組合役職員の方が多く、一般に広く知れ渡っているとは言い難い。
 少額訴訟とは、民事訴訟のうち、三〇万円以下の金銭の支払いをめぐるトラブル(紛争)をすみやかに解決しようとする手続き。





 これは民事訴訟法が平成十年に改正された際にできた制度で、複雑困難でない小規模な民事紛争について、訴額に見合った経済的負担で、迅速かつ効果的な解決を裁判所に求めることができるようにすることを制度の趣旨としている。以下、その概要をセミナーの内容に基づきながら紹介しよう。

2.制度創設の背景

 通常の裁判では、小口債権の売掛金や貸付金が焦げ付いてから裁判所に訴えても、(1)時間がかかる(2)金がかかる(弁護士に訴訟を委任しても着手金に最低十万円かかる)(3)精神的苦痛を伴う などのロスがある。それゆえ、従来の裁判では、“金と時間と労力”がかかって“やるだけムダ”とされることも多かった。しかし、あちこちの小口の売掛金や貸付金が焦げ付くと“ちりも積もれば山となる”というように、結局は債権者側の経営を圧迫することとなる。
 我が国の裁判制度で、国民の生活に密着した庶民のための少額訴訟事件を取り扱うことを目的としたものに簡易裁判所がある。簡易裁判所は、裁判所法が定める最下級の下級裁判所で、訴訟の目的の価額が九〇万円を超えない訴求事件について裁判権を有する。
 しかし、庶民のための簡易裁判所も、必ずしもその理想どおりに機能せず、やはり「時間とお金がかかりすぎる」という難点が指摘されていた。
 このような背景のもとに、一般国民に分かりやすく、かつ利用しやすいという民訴法改正のもとに、簡易裁判所の手続きの特則として、“早く・安く・親しみやすい”の観点から少額訴訟の手続きを創設した。


中小企業静岡(1999年 9月号 No.550)