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「経営」




「簡単にできる市場調査の進め方」
 
既存データと新規調査の効果的活用を

 
中小企業診断士  
高 橋 信 義
 静岡市瀬名7丁目10-10
 TEL 054-261-6071



■昨今の厳しい経営環境の中で、組合員企業では、市場調査の重要性を再確認しているところです。組合としても、今後、組合員のこうした要請に応えるために、市場調査の手法や実施上の留意点があればご教授いただきたいと思います。



市場調査は科学的経営のツール

 近年、いちだんと冷えきった消費者心理のもと、流通の最前線にある小売商業の低迷が目立っています。従って、小売業ばかりでなく、商品を提供する卸売業やメーカーまで消費者の求めているものは何か(商品ばかりでなくサービスも含めて)どうすれば消費者の購買行動に結びつけられるか等、真剣に考えています。これらの業者で構成される組合でも、市場調査を積極的に行い、業界活動を活発化したいことでしょう。
 市場調査については、専門の調査機関もあり、また、行政官庁(国や県などの機関)や各地の商工会議所や商工会などの諸団体でも一部の調査(たとえば「消費動向調査」や「通行量調査」などの定期的なものから、地域商店街や特定業界についての臨時的なものもある)を行っていますので、官庁や諸団体に問い合わせ、そうした資料を入手し、十分に活用したいところです。
 「市場調査(Marketing research)」とは「商品やサービスの流通に関する諸問題についてのデータの組織的収集・記録・分析である」と定義され、これにより問題点を発見し、対策を実施し、かつ、その効果を測定するものです(左図参照)。カンや経験に頼るだけの経営ではなく、科学的な経営をするためのツールとして注目されています。
 しかし、ここでは限られた紙幅の中で詳細にその手法や留意点を述べることはできませんので、「家庭買物調査」を一例として紹介しますので、参考としてください。


(柏木重秋編著「市場調査」より)

■回答者の心理への配慮も必要

 買物調査は、特定地域(商圏)の消費者の世帯特性、買物行動の実態、かつ、商業施設に対する評価、要望を調査し、把握する方法です。
 対象地域内の地区、または町ごとに同じ割合(たとえば全体の三%の割合)で世帯を抽出し、その世帯にアンケートを配布、または個別訪問し記入(直接聞き取ることもある)してもらいます。
 調査項目としては、世帯主の年令、家族数、現在地での居住年数、有業人員(主婦は専業か)、未就学児童の有無、実質所得水準(ランク別)、世帯主の職業、自家用車の有無などの消費者の世帯特性、日常の商品別買物場所、買物理由、買物頻度、買上金額(単価)、交通手段などの買物行動の実態、さらには各施設への意見要望(駐車場・自転車置場・通路・価格・サービス等)といったものが挙げられます。中には、正直に答えてもらいにくいものもあるかと思います。
 これらの調査を検討したり、集計したりして、その結果を改善活動に役立てます。他に、来店客調査やモニターによる意見聴取などが行えれば、その結果も併用して判断すればより良い結果が得られるでしょう。
 特に、家庭訪問による調査は、その店(または商店街)の商圏範囲の把握(一次・二次・三次商圏)、市場占拠率の判断、競合地や競合店の判断、調査地区の住民の暮らしむきの把握、購買習慣の把握、住民の好意度等が分かり、店舗コンセプト、客層ターゲット、業種構成や配置、商品政策を決めるうえでの資料となります。


■目的に応じた最小限の項目設定を

 この調査の留意点を記述します。
一、目的をはっきりとして、調査票の設問は目的に沿った回答が得られるようにする。
二、回答者の心理(見栄など)に配慮して、回答を判断することも必要。
三、市役所や商工会議所、消費者団体・婦人会などの応援があると、回収しやすい。
  年令的な偏りはあるが、学校生徒の家庭を対象に選ぶと、良い回答が得られ、
  回収も良い。
四、あまり多い設問は、嫌われ、かつ、良い回答が得にくい。
五、多少の品物を、お礼として回答者に差上げると、好意が得られる。

 これらは、基本であるとともに、他の多くの市場調査でも共通している点です。
 以上、買物調査の例を中心に、市場調査の進め方について触れてみましたが、何よりも明確な目的に沿って、必要最小限の資料の収集・分析をし、組合運営や組合員の経営に役立つよう進めていただければと思います。


中小企業静岡(1998年 7月号 No.536)