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4



   
企業組合
   浜名湖えるだークラブ


   
時代の要請に応えた手作り専門玄人集団



              
〒431-0431  湖西市鷲津332-8
               TEL 053-576-0637

 



▲企業などの研修も請け負う



高齢化社会を見越して


 浜松市から車で西へ約1時間。愛知県との県境に位置している湖西市。今回紹介するのが、うなぎで有名な浜名湖周辺で活動している企業組合浜名湖えるだークラブである。
 現在、総務庁の推計によれば(一九九七年九月現在)日本の高齢人口(六五歳以上)は一九七三万人で、全人口の十五・六%を占め、国民の六・四人に一人が高齢者となっている。
 また、国立社会保障・人口問題研究所発表の「日本の将来推計人口」(九七年一月推計)によれば、二千五十年には、六五歳以上人口の割合は、三二・三%(約三人に一人)となるということである。
 日本社会も高齢社会に突入している過渡期であるといえる。
 このような背景をもとに企業組合浜名湖えるだークラブは、平成七年十一月に任意グループとして活動を開始した。

組合員は高度な専門家

 二二人の組合員は、湖西市を中心とした企業を定年退職した元サラリーマン。いずれも品質管理・経営管理・労務管理・技術開発など豊富な専門知識技能を有する“専門家”である。
 湖西市を中心とする浜名湖周辺は、県内でも有数の工業集積地域であり、大手企業を中心にTQC、TPMやISO9000認証取得活動などに積極的に取り組んでいる地域である。
 一方でこれらの活動に取り組んだ高度な技術者が六十歳定年を迎え退職し、その後に働く場に確保が課題となっていた。
 そこで地元企業のOBによる任意グループを作り、その知識や経験を生かしたコンサルタントを行う専門家集団として活動を開始。定期的な労務相談や企業の新人研修等教育研修事業に力を入れていた。
 しかし、県や市からの発注を受けるときに、任意グループでは信用力が十分でないため、企業組合への法人化を決め、今年四月に組合を設立した。
 中小企業にとって、混沌とした現代の経済情勢にいち早く対応するために経営戦略及び戦術を構築することは必須の課題である。
 しかし、このような企業がいざ現場ラインを改善し、環境規格を取得するためには物理的にも経済的にも負担が大きい。
 こうした中で、地元企業の現状をより把握している専門家が相談にのり、コンサルタントすることは、企業にとっても大きなプラスになる。



▲スケジュールもギッシリ


現場の中での指導

 組合では、企業のニーズに応えるため、組合員が直接企業に何回も巡回し現状分析を入念に行っている。
 しかも、組合員は改善点を専門の教科書どおりに企業に教えているのではなく、実際に現場で作業員と働き説明するのである。
 「あまり企業には負担をかけずに、懇切丁寧に指導する。書いてあるものを機械的に説明するのは、他の専門家と変わらない。我々にしかできないことをやってみたい」(高田理事長)
 現在、既に組合では九社からの注文を受けており、一年〜二年位の期間をかけて指導を行っている。注文先には、官公庁や大手企業が含まれている。もちろん中小企業経営者からの指導依頼も多い。
 組合で依頼される内容は「現状の経営には不安があるが、何が問題でどこから手をつけてよいかわからない」といったものが多く、各分野の専門家を数人派遣して、どの分野から効率的に戦略を構築すれば良いかから指導を始めることが多い。幅広い角度からきめ細かなコンサルタントを行うことで、地元企業からの評価も高い。
 「相談を受けた企業からは、コンサルタントとしてではなく、会社の一員として、忘年会に呼ばれるケースもあります。」(鈴木専務)
 また、通常ISO9000シリーズを取得するための指導を専門家に依頼すると、二〜三千万円かかることもあるが、、組合員が指導する場合は約十分の一で済むなど、費用面での負担が軽いこと中小企業にとっては大きなメリットである。
 組合では、パンフレットを作成して活動をPRする一方で、組合員の資質向上を目指した研修会を行い、より高度な技術や知識を身につけていくことを目指している。
 今後高齢化が進む中で、定年で企業を退職していく人が多くなる。中小企業としても高齢者の技術や知識を活用していくことが求められてくるだろう。
 こうした中で、高齢者が自己研鑚を図り、その能力を地元企業の経営に生かしていこうとする組合の活動は注目に値する。時代の要請に応える新しい形の組合として一層発展していくことが期待される。

中小企業静岡(1998年 7月号 No.536)