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視点・指導員の現場から

重要性増す労働契約としての就業規則

労使間のトラブルを未然に防ぐには

労働担当セクションに長く携わっていたこともあり、労働問題全般に関する相談をいただくことが多いが、昨年秋以来の厳しい経済情勢を反映し、最近では、相談内容も労働条件の切り下げや、休業、解雇といった非常にシビアな問題が増えている。

こうしたことが避けられない場合、その実施については、法令や労使間で定められたルールの遵守はもちろん、労使間の事前の話し合いや説明等が必要だが、現実的には法令の理解が不足している場合や、労使間のルールも無く(あっても周知されていない)、また、話し合いや説明も行わないまま実施しようとするケースも多く、万が一そのような状態で実施した場合、トラブルとなってしまうものと思われる。

さらに、経営者が労働者を雇用する際、労働時間や賃金、退職・解雇に関する労働条件を明示していないことや、就業規則の未作成などが原因でトラブルとなるケースも多い。

こうしたリスクを未然に防止するためには、労使が共に納得した職場全体のルール作り、すなわち「就業規則」を作成したうえ、個々の労働条件に関する取り決めを行うことが必要である。

労働契約法における就業規則のポイント

平成20年3月1日より、就業形態の多様化、個別労働関係紛争の増加等を背景に、個別の労働者および使用者の労働関係が良好なものとなるようにルールを整えるため、労働関係は契約に基づき成立するという原則を明確にした労働契約法が施行されている。

就業規則について労働契約法第7条では、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合は、その合意内容が労働者の労働条件になる。(ただし、その労働条件が就業規則を下回っている場合には就業規則の内容に引き上げられる)」と規定された。

これにより、就業規則で定める労働条件は、周知と内容の合理性という要件がそろえば、労働契約の内容になることが明確になった。

また、就業規則の変更については、使用者が労働者と合意することなく、一方的に就業規則を変更しても労働者の不利益に労働条件を変更することはできない。(労働契約法第9条)。

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その変更が合理的であること、労働者に変更後の就業規則を周知させることが必要(労働契約法第10条)と規定され、いずれの場合でも合意と周知がされていなければ労働契約の意味を持たない。このため、作成はしたが会社の金庫に眠っているような就業規則は注意が必要である。

「就業規則」は従来のような単に服務規律や労働条件を定めるためだけのものではなく、労働契約としての就業規則として重要な位置付けとなってきており、企業規模にかかわらず整備の必要がある。(吉田)