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シリーズ「くみあい百景」

高度化資金完済、更に魅力ある工場団地組合を追求

焼津鉄工団地協同組合

住所:〒425-0052 焼津市田尻字和田2331番地の6
理事長:飯塚 進
組合員:11社
設立:昭和57年12月13日
TEL:054-624-7717
FAX:054-623-3479

 

組合設立の経緯

組合全景

平成21年10月2日、事業運営・財務内容などが健全である優良組合に贈られる産業振興知事褒章を焼津鉄工団地協同組合が受賞した。同組合は、集団化による高度化資金を完済している。

そこで完済後の組合運営等の考え方について飯塚進理事長、堀江肇専務理事、青年部の武村浩道氏と面談し取材した。

本組合は、焼津市内の住工混在の中で操業していた組合員の共通の悩みであった騒音・振動などの公害問題と工場を拡張できず狭隘化による非効率な生産性の問題を克服したいとして、昭和57年12月組合員13社(現行11社)が結集し、新天地を求め組合を設立した。

土地は公害防止事業団資金で昭和59年取得、工場建屋は高度化資金を活用し建設、60年3月4社、10月7社が移転、61年12月2社が移転し、近代化された新工場が建ち並ぶ工場団地内で操業を開始した。

団地移転の副産物

組合は工場団地移転後、毎月1回全体会議を開催している。

会議は組合運営に関する議題が主であるが、議題終了後交わされる組合員及び取引先の景況に関する雑談が、地域経済の実態を的確に捉えた情報収集の場となっていた。また、各組合員のこだわり的な製造技術、ホットな労務管理、意外な販売戦略などが、お互いに刺激を受け、各自の経営手法となり、更に、組合員工場の視察を行うことでより一層の相互理解が深まる場となった。

これら組合行事の積み重ねにより飯塚理事長等は、「組合員間の取引や仕事の紹介などに結びついている」という。

例えば、「鉄の鋳物を業とする組合員が、取引先の求めに応じてアルミの鋳物を業とする組合員を紹介することも多々ある」と説明してくれた。

武村氏は「工場団地は、往々にしてハード面の近代化・高度化が注目されがちであるが、自社の営業マンに代わって他の組合員が行う副産物があることも知って欲しい」と語ってくれた。

堅実な金融事業

殆どの工場団地組合は、組合員工場占有地、組合会館敷地・緑地帯等の共有地を担保として金融事業を実施している。

特に参考とすべきは、公平な担保評価に基づく融資限度額の設定と、これを実行する金融委員会による堅実な運営である。

本事業に関して堀江専務理事は「本組合も同様に明確な融資規約があるので、不祥事や事故がない」また、「昨年10月、政府系の金融機関から民間銀行に移行した株式会社商工組合中央金庫であるが、我々のような小規模の組合にあっても組織金融を継続する当金庫の存在を忘れてはならない」という。

共同事業の意義

工場団地組合は、金融事業はもとより共有地等の資産管理事務もあって、どこの団地組合も事務局を有し、本組合も1名の専従職員が常駐している。

その人件費負担は大であり、賦課金や共同事業などの手数料収入で賄っている。どちらにウエイトを置くか組合により異なる。

10月号で紹介した富士グリーン工業団地協同組合は、組合に対する組合員の帰属意識を維持するためには、共同事業の実施が有効であるとしているように、本組合も金融事業収入330万円をはじめ、共同購入事業収入480万円、共同駐車場収入280万円など貴重な財源となっている。

飯塚理事長は「共同事業メリットが、組合員にとって組合の存在価値であり組合への帰属意識に繋がる」また、「共同事業収入による間接的な人件費負担は、利用上のメリットに基づく負担であるから、賦課金よりも負担意識が軽減する」と事業収入を強調した。

後継者の育成

左から武村青年部員、堀江専務理事、村松事務員

組合員11社中、二世又は三世の若手後継者を有する組合員は現在7社である。

後継者は、設立経緯や団地組合としての共同事業の意識が希薄となりがちである。このままでは、魅力ある工場団地組合の追求や団地移転で生じた副産物の維持も困難となろう。最悪の事態は、組合の解散である。

そこで飯塚理事長は「最悪の事態を避けるために新たな組合の事業展開について共に考える機会を後継者に与えたい」という。