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特集

組合運営に影響を与えるのはココだ!
必読 組合法改正

「中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律」について

中小企業等協同組合法の一部改正

2 共済事業の健全運営の確保

これまで事業協同組合の行う共済事業については、責任共済を除き特段の規制は定められていなかった。しかしながら、事業規模の拡大や保険業法の改正等を踏まえ、共済事業の健全性を確保するための措置を講じる。
具体的には、共済事業を行う組合全般に対して一定の措置を導入したうえで組合員数が1000人を超える「特定共済組合」については、さらに一定の措置を上乗せすることとしている。併せて火災共済事業に関する措置の見直しを行う。

1 共済事業を行う全ての組合への措置

(1)共済事業の定義(第9条の2関係)

共済事業とは、「組合員などの共済契約者から共済掛金の支払を受け、共済事故の発生に関し共済金を交付する事業であって、共済金額その他の事項に照らして組合員など共済契約者の保護を確保することが必要なものとして主務省令で定めるもの」と定義する
。(*現在、共済金額30万円以下のものについては、適用を受ける法律上の共済事業に当たらないという考え)

(2)員外利用の見直し(第9条の2及び第9条の7の2関係)

組合が行う共済事業の利用については、(1)組合員と生計を一にする親族(2)組合が組合員の場合は当該組合の構成員―を組合員とみなす。

(3)共済事業開始時における共済規程の認可(第9条の6の2及び第9条の9関係)

事業協同組合や協同組合連合会が実施する全ての共済事業について、事業開始時点で事業の健全性を確保するため、共済規程の行政庁による認可を義務付ける。(既に共済事業を実施している組合も含む)
※経過措置:既に共済事業を実施している事業協同組合等については、施行日から6ヵ月間(平成19年9月末まで)は認可を受けていない場合であっても引き続き共済事業を行うことができる。

(4)共済目的契約の譲渡の規定の整備(第9条の6の3及び第9条の7の2関係)

共済契約の目的が譲渡された場合、譲受人は共済事業を行う組合の承諾を得てその目的に関し譲渡人が有する共済契約上の権利義務を承継することができるものとする。契約者は、引き続き組合員として共済契約を継続することができるものとする。

(5)共済募集に係る規制(第9条の7の5関係)

今般、火災共済協同組合の火災共済事業に加え、事業協同組合等の共済事業の募集行為に対しても一定の規制を適用。

  1. これまで火災共済協同組合の募集人は、組合の役員・使用人、組合員、組合員の役員・使用人に限定されてきたが、今般、これまでの募集人の禁止行為(虚偽告知の禁止、重要事項の不告示等:保険業法第300条の準用)等に加え、(2)に記載するクーリング・オフに関する規定を設け、募集人の行為規制に関する規定を整備することを踏まえ、募集人の要件を特段設けないこととする。
  2. これまで、共済契約については、クーリング・オフ制度の適用がされていなかった。しかしながら、今般、共済事業を行う組合全般に対し事業の健全性を確保するための措置を導入することで、中小組合法上、共済契約者という概念が明確となることに併せて、クーリング・オフ制度を導入することとする。(保険業法第309条の準用)

(6)共済事業に係る経費の賦課の変更(第12条、第33条関係)

共済事業においては、共済掛金が、事業費、人件費等を含んで設定されることが通常であることから、共済事業を行う全ての組合において共済事業について経費の賦課(第12条第2項)及び定款への経費の分担に関する記載(第33条第1項)を禁止する。
※経過措置:経費の賦課については定款記載事項であり、その変更は総会の議決事項であるため、新法施行日において共済事業を行う組合については、共済事業の経費の賦課の禁止に関する規定(新法第12条第2項)は、施行日以後最初に招集される通常総会の終了時までは適用しない。

(7)共済金額の削減及び共済掛金の追徴規定の定款への義務づけ(第33条関係)

全ての共済事業に対するセーフティネット的な措置として、共済金額・再共済金額の削減及び共済掛金・再共済料の追徴に関する事項の定款記載義務について、共済事業を行う全ての組合に対し適用することとする。
※経過措置:共済金の削減及び共済掛金の追徴に係る事項については定款記載事項であり、その変更は総会議決事項である。
このため施行日において共済事業を行う組合については、施行日以後最初に招集される通常総会の終了時までは適用しない。

(8)会計監査人による外部監査の義務づけ(第40条の2及び第40条の3関係)

共済事業を行う組合について、近年、粉飾決算により組合が破綻し、共済契約者への契約金支払いができない事例が発生している。このため、共済事業を行う組合のうち、負債の額が一定超(具体的な水準については、検討中)のものに対し、会計監査人による監査を義務づけることとする。
また、子会社等を利用した粉飾決算等を防止する観点から、会社法にならって連結決算関係書類に関する規定についても併せて整備することとし(第40条の2第2項:ただし、会社法と異なり会計監査人の設置が義務づけられる組合が子会社を持つ場合、連結決算関係書類の作成は義務づけられることに留意)、会計監査人の職務及び責任等(第40条の2第3項から第5項)、一時会計監査人の選任についても規定。(第40条の3)
※経過措置:会計監査人による外部監査に対応するためには、規程類の整備など組合における負担が特に大きいため、新法施行の際、現に存する組合で、新法第40条の2(会計監査人の設置義務)に規定する組合に該当するものについては、同条及び新法第40条の3(会計監査人の職務)の規定は、施行日以後最初に終了する事業年度に係る決算に関する通常総会の終了時まで適用しない。

(9)共済事業の譲渡に関する規定の整備(第57条の2の2関係)

火災共済協同組合及び同連合会については引き続き事業の譲渡を禁止。共済事業を行うその他の組合は、共済事業の譲渡は総会の議決によるものとし、責任準備金の算出の基礎が同じである場合についての共済契約の包括移転を認めることとする。責任共済等の事業の譲渡については、これまでも責任共済等の事業を行う他の組合に対してのみ認められていることから、同様の趣旨を規定することとする。また、共済事業の譲渡等全般に関し、債権者保護規定を整備することとする。

(10)余裕金の運用制限(第57条の5関係)

共済事業を行う組合は、業務上の余裕金を法律で定める方法によるほか運用してはならないものとする(共済事業を行わない組合であっても、一定規模以上のものについては、同じく余裕金の運用制限の対象とする:前掲)。 ※経過措置:新法施行日から3年間で当該運用に係る資産の処分をしなければならない。

(11)共済事業を行う組合の利益準備金、責任準備金及び支払準備金の積立てに関する規定の整備(第58条関係)

共済事業を行う組合については、組合員勘定をさらに充実させ、仮に責任準備金等の負債の額の積立てが不十分であった場合でも一定程度の対応を可能とするため、利益準備金の積立額・積立割合を引き上げる。具体的には出資総額に達するまで、毎事業年度の剰余金の5分の1以上を法定利益準備金として積み立てなければならないこととする 。(第1項、第2項)
責任準備金、支払準備金については、共済事業を行う全ての組合について適用することとした。
(第5項)また、収受した共済掛金を運用し得られた収益で共済金の支払い等に充てられないものを契約者に分配する旨の契約(契約者割戻付契約)を行う場合、公正・衡平に分配しなければならない旨も規定することとする。
※経過措置:施行日以後に開始する事業年度から適用することとする。

(12)共済事業と他の事業との間の区分計理(第58条の2関係)

共済事業を行う組合が、他の事業を兼業する場合であって兼業する他の事業の健全性が確保されなかった場合に、共済事業のための資産をこれに流用するといったことは、共済事業を利用する組合員、契約者保護の観点からは好ましくない。こうしたことを踏まえ、共済事業を行う全ての組合に対して共済事業とその他事業との間の区分経理を導入する。
さらに、共済事業の会計の独立性を高め共済事業に係る資金が他の事業に流用されることを防止するために、新たに共済事業会計から他事業会計への資産流用等を禁止する。

(13)重要事項の説明義務(第58条の5関係)

共済事業を行う組合は、その共済事業に係る重要な事項の利用者への説明その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならないものとする。

(14)共済計理人の選任等(第58条の6から第58条の8まで関係)

近年、共済事業の内容の多様化・複雑化により共済掛金、責任準備金の算出方法など共済数理に関する専門的な知識が求められるケースがある。また、収受した共済掛金を運用し得られた収益で共済金の支払い等に充てられないものを契約者に分配する旨の契約(契約者割戻付契約)も存在。この場合、共済契約の締結時期により割戻しされる金額が異なるなど公正な割戻しを担保する必要がある。
こうしたことを踏まえ、長期の共済契約であって共済数理に関して必要な知識・経験が必要な場合又は契約者割戻付の共済契約を取り扱う組合(具体的な要件については主務省令で今後規定)に対し、共済数理に専門的な知見を有する共済計理人(共済計理人の具体的な要件については主務省令で今後規定)の選任、共済掛金の算出方法等への関与を義務づけることとする。
共済計理人は、毎事業年度末に責任準備金の積立の妥当性、契約者割戻しの公正性等を確認し、理事会に意見書を提出するとともに、行政庁に対しても意見書の写しを提出することとする。また、共済計理人は、共済掛金・責任準備金の算出・積立といった共済事業の根幹を担う存在であることから、これが組合法違反等の行為を行った場合には、行政庁は組合に対し、共済計理人の解任命令を出すことができる。
※経過措置:新たに理事会において共済計理人を選任する必要があると想定されるため、施行日後6ヶ月間の猶予を与えることとする。また、共済計理人は、年度を通じての責任準備金の積立て、契約者割戻しの公正な実施に関して年度末に意見書を提出することとなり、年度途中からの関与では機能しないことから、選任した日以後に開始される事業年度から関与させることとする。

(15)業務・財務の説明書類の公衆縦覧(第61条の2関係)

事業運営の透明性を高めるため、共済事業を行う組合に対して業務及び財産の状況に関する説明書類の公衆縦覧を義務づけることとする。
また、共済事業を行う中小企業組合が子会社等を有する場合であって、新中小組合法第40条の2の規定により会計監査人による外部監査が義務づけられる組合については、子会社等との連結書類の縦覧を義務づけることとする。

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2 「特定共済組合」に対する措置

(1)特定共済組合に対する名称使用の強制(第6条関係)

特定共済組合や同連合会は、原則、共済事業を専業に行う組合となる(後述)。よって、その事業と名称を一致させるため、その名称中に「共済協同組合」または「共済協同組合連合会」の文字使用を義務づける。
ただし、少人数規模で共済事業を専業に行う組合も存在し、これらに対して「共済協同組合」「共済協同組合連合会」の文字を禁止するものではない。

(2)特定共済組合等の原則兼業の禁止(第9条の2及び第9条の9関係)

特定共済組合及び同連合会は、自治運営が特に機能しにくく、仮に共済事業と他の事業との兼業を認めた場合、他の事業の健全性が確保されずに共済事業にも影響を及ぼすことも想定される。したがって、自治運営が機能しにくい特定共済組合については、こうした状況の発生を制度的に排除するため、共済事業と他の事業との兼業を原則禁止する。
ただし、組合の利便性を向上し、組合への加入を促し、その結果、さらなる共済契約者の確保による共済事業の安定的運営につながる事業であって、事業内容が資金の未回収が想定され得ないなど共済事業に影響を及ぼさない事業についてのみ極めて限定的に兼業を認めることとする。なお、他の事業との兼業を行う場合は、共済事業と他の事業との間の資金流用を認めない形での区分経理を義務づけることとする。
※経過措置:特定共済組合などが施行日において他の事業と兼業している場合、当該事業を引き続き5年間継続可能とする。

(3)最低出資金額の設定(第25条関係)

特定共済組合及び特定共済組合連合会の出資の総額は、法律で定める額以上でなければならないものとする。
経過措置:出資金の増額は、組合員から追加的に払込みを受ける必要があるため、適用については5年間の猶予を与える。

(4)健全性に関する基準の設定(第58条の4及び第106条の2関係)

行政庁は、特定共済組合及び特定共済組合連合会の共済金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準(いわゆる「ソルベンシー・マージン比率規制」:支払余力を表す数値基準)等を定めることができるものとするとともに、支払能力の充実の状況に係る区分に応じて、行政庁が組合に対し、監督上必要な命令をすることができるものとする。

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3 火災共済協同組合に係る措置

【新たに追加する措置】

  1. 会計監査人による外部監査 1(8)
  2. 重要事項の説明義務 1(13)
  3. 共済計理人の選任等 1(14)
  4. 説明書類の公衆縦覧 1(15)
  5. 最低出資金の引上げ 2(3)
  6. 健全性に関する基準設定 2(4)

【火災共済協同組合特有の措置】

特有の措置として主に以下を導入する。

(1)火災共済協同組合における員外利用の見直し(第9条の7の2関係)

現行規定においては、信用協同組合が火災共済協同組合の組合員となった場合、「当該信用協同組合を直接又は間接に構成する者」も火災共済協同組合の組合員とみなして火災共済契約の締結が可能となっている。信用協同組合は、組合員資格に地区内の住民、勤労者を含むこととなっている。
しかしながら火災共済協同組合は中小企業者、個人事業者のための組織であるため、個人を火災共済協同組合の組合員とみなすことは不適当である。このため、組合員とみなす範囲を、火災共済協同組合の組合員資格を有する中小企業者、個人事業者に限定するため、今般「第8条第3項(火災共済協同組合の組合員資格を規定)に規定する小規模の事業者である者」を規定する。

(2)火災共済協同組合の地区規制の変更(第26条、第26条の2関係)

火災共済協同組合にこれまで以上に大数の法則を働かせるため、火災共済協同組合の地区を1つ以上の都道府県とすることを可能とする。なお、同一都道府県内における複数組合設立の禁止については引き続き維持する。

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4 その他共済事業に関する措置

(1)保険代理業務に関する規定の創設 (第9条の2第6項関係)

事業協同組合、事業協同小組合及び協同組合連合会は、組合員のために保険募集事業及びこれに附帯する事業を行うことができるものとする。

(2)共済規程等の軽微な変更についての総会議決不要の措置(第51条関係)

共済規程等の軽微な変更については、総会の議決を不要とする。

(3)共済事業を行う組合の合併等に関する総代会での特別決議の容認(第55条の2関係)

共済事業を行う組合は、組合の合併等について総代会での特別決議ができるものと する(従来:総会での特別議決のみ)。

(4)監督規定の整備(第104条から第 106条の2まで関係)

共済事業を行う組合に対する監督について、所要の規定を整備する。
※経過措置:共済事業を行う組合で会計 監査人の監査を義務づけられる組合が子会社等を保有する場合、子会社等の業務・財産の状況を連結して記載した決算関係書類を行政庁に提出することを義務づけることとしているが、これについては施行日以後最初に終了する事業年度の翌事業年度から適用する。

(5)行政庁への届出(第106条の3関係)

共済事業を行う組合は(1)共済代理店の設置・廃止(2)共済計理人の選任・退任(3)共済事業を行う組合の子会社等の新規保有他、(4)共済事業を行う組合が公衆縦覧を開始した時、等に該当するときはその旨を行政庁に届けなければならない。
※経過措置:届出の猶予期間として施行日から6ヵ月は適用しない。

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【第9条の2第6項】

事業協同組合及び事業協同組合小組合は、組合員のために、保険会社(保険業法《平成7年法律第105号》第2条第2項に規定する保険会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずる者として主務省令で定めるものの業務の代理又は事務の代行(保険募集《同条第26項に規定する保険募集をいう。以下同じ。》及びこれに関連する事務として主務省令で定めるものに限る。)を行うことができる。