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特集

組合運営に影響を与えるのはココだ!
必読 組合法改正

「中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律」について

18年6月9日 成立
19年4月1日 施行

改正の背景

中小企業や個人事業者等が相互扶助の精神に基づいて運営してきた中小企業組合制度について、近年、その規模の拡大や事業の多様化に伴って、組合が破綻する事例等が発生してきていることから、中小企業組合の事業運営全般の規律強化を図るとともに中小企業組合による共済事業(保険事業)の健全な運営を確保するための措置が講じられた。

中小企業等協同組合法の一部改正

1 事業運営の規律強化

会社法の施行を踏まえ、組合の自治運営が効果的に機能するために、組合運営全般の見直しを行う。組合全般を対象とした措置を講じるとともに、組合員数に着眼して一定の規模以上の組合を対象とした措置を講じる。

(1)監事への業務監査権限の付与等(第36条の3関係)

組合員数が政令で定める数(1000人を想定)をこえる組合(以下「大規模組合」という)については、理事に対する監視機能を強化するため、監事に業務監査権限を付与する。
(36条の3第2項)併せて、理事の責任・義務を明確にするとともに監事の権限も明確にする。(36条の3第3項)業務監査権限をもつ監事は理事の職務の執行を監査するとともに、監査報告を作成しなければならないこととする。
【大規模組合:業務監査権限の付与義務】
その一方で、大規模組合以外は、定款において監事の監査権限を会計に限定できることとし(36条の3第4項)、併せてこの場合の理事、監事の権限・義務を明確化することとする。また、会計監査のみに限定した場合は、組合員による理事会招集ができることとされた(後述・第36条の6第6項)点に注意が必要である。
※経過措置:定款、規約の変更や業務監査に必要となる書類の整備等相当程度の準備が必要となるため、施行日以後最初に終了する事業年度に係る決算に関する通常総会の終了の時から適用することとする。 (附則第11条関係)

(2)員外監事制度の導入(第35条関係)

組合員による自治運営が機能しにくいため、組合運営の状況を第三者にチェックしてもらうとの考えから、監事のうち1人以上は組合員以外の者とすることを義務付ける。
なお、員外監事の導入が義務付けられる組合の監事については員外監事以外に加えて、組合員が監事となっているものも含め、業務監査権限を付与する。
また、信用協同組合及び同連合会については協同組合による金融事業に関する法律第5条の3第1項において員外監事の規定が別途存在するため除く。
【大規模組合のみへの義務づけ】
※経過措置:監事に適した者を新たなに探し出した上で総会において選任する必要があることから、組合に一定の猶予を与える。具体的には、施行日以後最初に終了する事業年度に係る決算に関する通常総会の終了時(3月決算の場合:平成20年4、5月)まで適用しない。(附則第9条関係)

(3)余裕金の運用制限(第57条の5関係)

近年、組合員による自治運営が機能しにくい大規模組合などにおいて、リスクの高い外債購入等による投機的な資産運用の失敗で組合が破綻し、出資金の返還が不可能となるなどの事例が出てきている。このため、大規模組合については組合資産の運用を一定の安全性が確保されるものに制限することとする。共済事業を行う組合全般についても同規制を課す。
経過措置:施行日から3年間で当該運用に係る資産の処分をしなければならない。(附則第15条関係)

(4)役員の資格要件の創設(第35条の4関係)

会社法の規定に違反し、刑の執行終了から2年を経過しない者等が役員となることを禁止する。

(5)役員の任期の変更(第36条関係)

理事による業務運営をこれまで以上の頻度で確認し、不正行為などを防止するため理事の任期を3年以内から2年以内へと短縮する。
また、業務運営を監視する立場にある監事の権限を強化すべく監事の任期を3年から4年に延長する。また、定款により監事の権限を会計監査に限定する組合(監査権限限定組合)の監事については自らの権限が会計監査に限定されることを明確に認識した上で就任している。このため、任期期間中に監事に業務監査権限を付与する旨の定款変更をした場合は、その事実を踏まえ新たに監事を選任することが適当である。
このため、監事の権限を会計監査のみから業務監査に拡大する旨の定款変更をした場合、監事の任期は満了することとする。 (新法第36条第5項)。
※経過措置:役員の任期変更については、新たな役員の選任が必要となる組合も存在するため一定の猶予を与えることとし、施行日以後最初に終了する事業年度にかかる決算に関する通常総会の終了前に在任するものの任期についてはこれまで通りとする。(附則第10条関係)

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役員任期の具体例

※これまで理事の任期を3年としており、今般の法改正に基づき理事の任期を2年とする場合の取扱い

※大規模な組合で監事への業務監査権限の付与及び員外監事の設置が義務づけられる組合であって、これまで監事の任期を3年としており、今般の法改正に基づき監事の任期を4年とする場合の取扱い

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(6)理事、監事及び組合員の権利義務に関する規定の整備(第36条の3関係)

監事が業務監査を行う組合においては、理事は、組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合は監事に報告しなければならず、また、6ヵ月以上継続して組合員である者は、理事が法令違反等の行為をするおそれがある場合において、組合に回復することができない損害が生ずるおそれがあるときは、理事に対し当該行為の差止請求をすることができるものとする。

(7)監査権限限定組合における理事、組合員等の権利義務に関する規定の整備(第36条の3関係)

監事が会計監査のみを行う組合(以下「監査権限限定組合」という)においては、理事は、組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合は組合員に報告しなければならず、また、6ヵ月以上継続して組合員である者は、理事が法令違反等の行為をするおそれがある場合において、組合に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、理事に対し当該行為の差止請求をすることができるものとする。

(8)監査権限限定組合における組合員による理事会の招集(第36条の6関係)

業務監査権限を有する監事が存在する組合については監事による理事会招集ができるが、監事の権限が会計監査に限定される組合の場合はこれが不可能とされる。このため、理事が組合の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、又はするおそれがあると認められるときには、組合員が理事会を招集できることとし、理事会の開催を請求した組合員は理事会に出席し、意見を述べることができるものとする。

(9)監事に対する理事会議事録への署名の義務づけ(第36条の7関係)

今般、監事に業務監査権を付与することに伴い、監事による理事会への出席や意見陳情を規定することから、会社法にならい、理事会に出席した監事に理事会議事録への署名を義務付ける。
※経過措置:業務監査の経過措置に合わせ、新法施行日以後最初に終了する事業年度に係る決算に関する通常総会の終了の時から適用する。(附則第12条関係)

(10)理事と組合の利益相反取引の制限(第38条関係)

理事が組合と契約する場合(理事と組合の自己契約)には理事会の承認が必要で、他方、理事の借入金債務に組合が債務保証を行う等、理事と組合の利益が相反する取引をしようとするときは、理事の独断により行われることを回避するため重要な事実を開示したうえで理事会の承認を必要とする旨の規定を追加した。

(11)役員の損害賠償責任の免除(第38条の2関係)

役員が職務を行うにつき善意・無重過失の場合については、損害賠償額から一定額を控除した額を限度として、理事会の決議によって免除できる旨を定款で定めることができるものとする。
※経過措置:新法施行日前の行為に基づく損害賠償責任については、なお従前の例による。(附則第13条関係)

(12)役員の責任を追及する訴え(第39条関係)

今般、会計監査のみ行う監事も含め、監事も責任追及の訴えの対象となることとし、また、共済事業を行う組合であって会計監査人を選任した場合(後述)の当該監査人も同様の扱いをする。

(13)決算関係書類・事業報告書の作成・保存期間の明記等(第40条関係)

決算関係書類に関する規定を以下のように整備する。

  1. 決算関係書類・事業報告書の作成義務
  2. 決算関係書類の10年間保存義務
  3. 決算関係書類・事業報告書を監事に提出し、その監査を受ける
  4. 監事の監査を受けた決算関係書類・事業報告書は理事会の承認が必要。
  5. 通常総会の通知の際に、組合員に対し、理事会の承認を受けた決算関係書類・事業報告書の提供が必要。
  6. 前記の総会資料は、通常総会の2週間前から主たる事務所へ5年間、従たる事務所へ3年間備え置く旨を規定。

(14)会計帳簿の保存期間の明記及び閲覧要件の緩和(第41条関係)

会計帳簿は、その閉鎖の時から10年間の保存義務を課す。また、少数組合員の権限を強化し、会計帳簿の閲覧要件を10分の1から100分の3に緩和。
ただし共済事業を行う組合、信用協同組合及び信用協同組合連合会については、閲覧要件の緩和はしない。

(15)総会における理事及び監事の説明義務(第53条の2関係)

理事及び監事は、総会において、組合員から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならないものとする。

(16)会計原則に関する規定の整備(第57条の6関係)

組合の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。