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新支店長に聞く

 商工中金、国民生活金融公庫 
 新支店長に聞く

政策金融機関として
多様化する資金ニーズに応える

 商工中金浜松支店、国民生活金融公庫静岡支店。今年七月、それぞれの支店に40代の若さ溢れる支店長が就任した。「脱踊り場」宣言後も、依然厳しい環境が続く中小企業への金融支援について聞く。

ワンストップ・プラネットフォームで
中小企業の持続的成長を支援

商工中金 浜松支店長
小林 昇

 昭和五八年、入庫。長野支店を振り出しに本部調査部、神戸支店、富山支店次長、本部次長、山形支店長を経て七月より現職。
長野県出身。



座右の銘は「先用後利」 富山で学んだ商売の原点

―はじめに、浜松の印象をお聞かせ下さい。
小林 これまで長野、富山、山形とどちらかといえば雪国の勤務が多かったので、温暖な浜松での勤務は正直、楽しみにしています。海あり山あり、浜名湖ありと、自然にも恵まれたすばらしい土地柄ではないでしょうか。
 赴任して日が浅いのですが、浜松地区は輸送用機器のウエートが高い産業構造のなかで、最近では光産業の躍進もあって全体的には好調を維持している、さらに言えば景気の上昇感さえある。そんな勢いを感じています。
 というのも前任地が東北でしたので、どちらかといえば農業や公共事業の分野で経済を支えている一面が強い。それと比べると、地域性の違いを感じるのは確かです。
 それと、お取引先の皆様とお話をしていますと、前向きで積極的な方が多い。これが「やらまいか精神」というんでしょうか。 
―これまでの業務経験の中で最も印象に残った点は
小林 一つが、神戸支店勤務の時に阪神大震災に遭遇したことです。とにかく瓦礫の中を走り回ったという記憶がある。車は使えないので、自転車を必死に漕いでお客様のもとを回り、その後は書類作り。そんな毎日でした。ただ、災害復旧融資を通じて中小企業の皆様のお役に立て、政府系金融機関の職員として大きなやりがいを感じることができました。いまでは、何よりも得がたい経験ができたと思っています。
 話が逸れますが、いま、東海地震がいつ起こってもおかしくないと言われていますね。こうした中、浜松地域のお客様の多くは地震に備えて様々な準備をされておられます。防災への意識は大変高く、これには驚かされましたし、感心しています。
 もう一つが、富山支店での貴重な経験です。実はこの時に、「先用後利」という言葉を知り、以来、私の座右の銘にしています。日本の伝統的マーケティングとして、「富山の薬売り」が事例に出されることは少なくありません。
 薬箱を無料で家庭に配置し、薬商が年に一〜二度、配置先の家庭を巡回し、顧客は使用した薬の代金だけを支払うというシステムです。このように商品を先に配布しておいて、実際に利用した分だけ料金を徴収する販売手法が先用後利(せんようこうり)と呼ばれているのですが、実は、薬を家庭に置いてもらうのは簡単なことではありません。全国各地の話題を提供し、時には健康相談にものる。薬商と顧客との長い付き合いと信用があって初めてできることではないでしょうか。私自身、こうした取引関係こそが商売の原点なんだな、と感銘を受けました。



中小企業静岡(2005年10月号No.623)