寄 稿 
 視点・指導員の現場から 
 編集室便り 




中国人観光客を呼び込もう!
誘致合戦に積極参戦




三億七千万人市場の誕生

 今年十一月、中国浙江省との友好提携二〇周年を記念した静岡県訪中団が同省を訪れた。その際、杭州市で静岡県観光プレゼンテーションが開催され、県知事による観光客誘致のトップセールスが行われた。
 今、国内観光業界は長引く不況下、来訪客の減少や他地域との競争激化など厳しい環境に晒されている。
 こうした現況の打開策として全国の観光地・温泉地では官民あげて外国人観光客の誘致運動に本腰を入れている。その矛先として最も注目されているのが、二〇二〇年には旅行者の送り出し数で世界四位に成長する見通しの中国だ。
 二〇〇〇年九月の北京市、上海市、広東省住民に対する日本への団体観光旅行開放(団体旅行に限りビザ申請を認める)から四年。今年九月一日には、小中学生の修学旅行でのビザ申請が免除され、さらに、同月十五日より、団体観光旅行のビザ発給地域が遼寧省、天津市、山東省、江蘇省、浙江省にまで拡大された。これにより、中国大陸沿岸地域の福建省を除く全ての都市、およそ三億七千万人の市場が誕生したのである。
 日本政府は昨年「観光立国」の政策を打ち出し、インバウンド促進の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始。訪日外国人の数を二〇一〇年までに現在の約二倍の一千万人にまで増加させる目論見だ。静岡県下の観光業界も、静岡空港の開港を控えグローバルな視点での市場開拓の時代に突入したといえる。

他県に負けるな!

 中央会では今年、熱海市のホテル旅館業界を対象に、中国人観光客誘致のモデル事業として、現地市場調査や観光プロモーション、旅行社の日本旅行担当者を招いた見学会等を実施し、今後の可能性や仕組みづくり、受け入れ側のハード・ソフト面での環境整備等について調査・研究を進めている。
 現地市場調査では、政府機関や現地旅行社にてヒアリングを行い、担当者の生の声を集めた。
 中国の旅行各社は日本への旅行を将来有望な市場と捉えているものの、東南アジアや韓国と比べ割高な上に価格競争は限界に近いことから急増は見込んでいないようだ。ビザ発給に関する厳しい審査と拒否率の高さも逆風となっている。
 こうした状況下、日本各地の自治体等による観光団の誘致合戦は活発だ。
 東京〜箱根(富士山)〜京都〜大阪を結ぶ定番コース上にある静岡は、豊富な観光資源を抱え、他県と比べ有利な立場にあることは間違いない。しかし、現在このコースに組み込まれるのは熱海や伊豆ではなく、箱根や河口湖等が一般的だ。また、来年の万博PRと「産業観光」を推進する愛知県も誘致に積極的であり、これら近隣のライバルに負けない旅行企画の立案とプロモーションの工夫、受入れ態勢整備の努力は怠れない。静岡の文化や産業をしっかり説明できるガイドの養成も必要だろう。
 今回のモデル事業を通じ、官民の機能を効果的に組み合わせた、静岡県独自のインバウンド振興策を構築したい。
(梅原)



中小企業静岡(2005年1月号No.614)