特 集 
 「くみあい百景」 
 編集室便り 



 指導員の現場から
合い言葉は
「ユニバーサルデザイン」!



「超高齢者社会」!

 静岡県の六五歳以上の人口の推移は、二〇一〇年で約八七万四千人、二〇二〇年には、約一〇五万二千人と予測されている。また、国勢調査においても、二〇三〇年代には、五十歳以上の人の割合が五十%以上に達すると推計される。
 超高齢者社会が進むなか、本県では平成十一年より、全国ではじめて『ユニバーサルデザイン(以下、UD)』を行政に取り入れた。
「UD」とは、アメリカ ノースカロライナ州立大学教授の故ロナルド・メイス氏の提唱した次の七原則の考え方が始まりである。
・誰にでも公平に利用できる・使う上での自由度が高い・簡単で直感的に分かる。使用方法が確立されている。・必要な情報がすぐに理解できる・うっかりミスや危険につながらないデザイン・無理な姿勢や少しの力で楽に使用できる。・アプローチのしやすい大きさ、空間になっている。つまり、高齢者をはじめ、すべての人が利用しやすい「まちづくり」・「ものづくり」を行う考え方のことである。

「脱常識と連携」

 中央会でも、ここ数年「UD」に係る事業を実施し、昨年度開催した一例として「UD」の発想をはじめて車に具現化したトヨタ車「新型ラウム」の開発担当者のお一人をお招きし「ハンドルは丸くなければいけないのか?」など脱常識の発想を含め「UD」への取組み方を示して頂いた。
 他にも新潟県燕市の地場産業(スプーン・フォーク)の衰退から大学や大企業との連携を模索。その結果、形状記憶ポリマー技術を活用し、障害のある人を含め、すべての人の手の形にあったスプーンの開発に成功した企業の常務には、その開発経緯と同氏が中心となって発足した異業種グループ「UD21・にいがた」の活動についてのお話を伺った。
 同グループの「UD」コンセプトやメンバー同士の活動事例にも触れ、飲み込む力が弱い高齢者や障害者も安心して食べられる「おかゆ」と同社開発のスプーンの連携等の説明を頂いた。

「行政との共同開発も」!

 お二方が共に言われたことは、ユーザーが納得するデザインや使いやすさ(ユーザビリティ)の徹底したテスト。開発当初の福祉用スプーンでは、これが不十分だったため苦い思いをしたこともあったそうである。
 本会事業にご協力を頂いた「静岡県静岡工業技術センター」では、「使いやすさ」の評価に利用できるソフトウエアの提供をはじめ自社製品のUD性能評価を実施したい企業の相談に可能な限り応えている。すでに大手通販会社を活用し、商品化に成功、売上に結びつけた実績もある。
 本県の調査では、UDの必要性は認めているが、実際に取り組んでいる企業は、約三割とまだまだ低いようである。同センターの活用をぜひ促したい。本会でも、今年度は「食品業界」を対象にUDへの取組みを提案する予定である。興味のある方は、創業支援課までご連絡下さい。

(揚)



中小企業静岡(2004年11月号No.612)