特 集 
 「くみあい百景」 
 編集室便り 




抜本的な若年者就労対策を

 少子高齢化の進展など様々な労働・雇用の構造変化に対応するため、雇用政策は今、まさに大転換期を迎えている。
 その一つが、年金改革に連動した高齢者雇用安定法の改正である。これにより、平成十八年度から段階的に六五歳定年に引き上げる、雇用継続制度を導入する、定年の定めを廃止する、等のいずれかの措置が企業に課されることとなった。
 元来、中小企業に於いては、良質な労働力確保の観点から、若年者やベテランなど年齢層を問わず、幅広い人材活用が習慣的に行われてきた。見方を変えれば、中小企業こそ、あるべき雇用政策の一端を具現してきたともいえよう。
 ところで、労働問題の深層には、心の底から日本の将来を憂う難問が潜んでいる。すなわち、若年者の労働意欲の喪失である。その現われがフリーターと称する若者の急増で、全国で実に二○○万人に達し、若年失業者もすでに一○○万人を数えるという。学校を卒業しても製造現場で一週間ももたない、挨拶もできない、人の話を聞く姿勢もない、やる気が見えない、すぐにふて腐れる ― これらは、教育現場と産業界との懇談会で絶えず指摘されている現実の姿である。
 その背景として、社会的道徳観や倫理観の欠落があげられるが、不安定就労層の増大は企業の競争力低下を招くばかりではなく、社会・産業構造の随所に発生しているひずみを加速度的に拡大させる結果となっている。
 若年者の就労対策については、国を挙げての総合的な施策が期待されるところであるが、当事者の声を分析しながら、教育現場と地域・産業界とが一体となって抜本的な問題解決にあたる以外に、もはや道はない。
 本会でも労働局の支援を得ながら、ジュニアインターンシップ事業や日本版デュアルシステム事業など、本格的な対策事業に着手したばかりであるが、今後、産業界の賛同をいただきながら、より一層力を入れて事業を推進していきたい。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2004年11月号No.612)