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税 務
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平成16年度 税制改正と
中小企業等への影響


公認会計士 青木隆知
〒420‐0816 静岡市沓谷6-17-1 パナハイツ沓谷101
TEL 054-264-6530 FAX 054-264-6531



平成十六年度税制改正の主な改正事項について解説して下さい。また、この中で中小企業等への影響も併せて教えて下さい。

平成十六年四月一日より、平成十六年度の税制改正が施行されました。今回の改正は、三位一体の改革として国から地方への税源移譲が根源的な改正の趣旨を成していますが、全般的には中小法人側からみれば小幅な改正となっており、個人所得税関係の改正関係の影響の方がより身近な問題となっています。

法人税関係

欠損金の繰越控除期間の延長

 各事業年度の損金が益金の額を超える場合には、一定の要件のもとに五年間の欠損金繰り越しが認められていました。今回の改正により、この繰越期間が七年間に延長されました。この改正は平成一三年四月一日以後に開始した事業年度において生じた欠損金から適用されることとなっています。
金融期間等の不良債権処理との関係から、繰越期間や適用にあたっての適用年度が検討された結果であるといわれています。繰越期間が二年間伸びたことは、経済情勢からみて歓迎されるところですが、会計上の欠損と税務上の欠損とが切り離されている現状は変わらないため、計数感覚にズレが生じる可能性は残っています。欧州諸国での繰越損失の適用期間は無制限になっていることから鑑みて、我が国の厳しい条件の枠が外れることが今後も期待されるところです。

帳簿書類の保存期間等の延長

 青色申告法人は、一定の帳簿書類を整理し、七年間納税地に保存しなければならないと規定されています。棚卸表のような帳簿代用書類にあっては、従来五年間とされていましたが、今回の改正では欠損金の繰越期間が七年間に延長されたことに伴い、代用書類も主要帳簿書類の整理保存期間と同様七年間とされました。主要帳簿といわれるものは七年間であったため、実質的な影響は、帳簿代用書類の分だけということになります。帳簿書類の保存については、法人等の電子化が日進月歩の勢いで普及していることから帳簿の保存方法に対し、法的にもその範囲が拡大され所要の手当がなされてきました。帳簿は申告納税するにあたっての基本となるべきものであり、税務調査や、裁判等では重要な役割を果たすことは当然のことでその保存については、十分な注意を注ぐことが必要です。しかし現実的には、取引量が増大化し、その保存方法も多様化してきたことから、一定の場所を確保したり、事務負担等の増大とともに頭が痛い問題となっています。
 この改正との関係から、脱税以外の場合の過少申告に係る更正の期間制限が七年間とされました。これは平成十六年四月一日以後に法定申告期限が到来する法人税から適用されます。



中小企業静岡(2004年5月号 No.606)