FLASH 
 専門家の眼 
 「くみあい百景」 
 編集室だより 



 労 務 
 専門家の眼 

従業員のこんな質問に答えられますか?
経営者としての年金の基礎知識

協同組合静岡年金実務二一
副理事長 丹治和人(たんじかずひと)
〒421-0104 静岡市丸子芹が谷町2-21-2
TEL・FAX 054-257-8592



複雑化する公的年金

 ヒト・モノ・カネ・情報は、経営の重要な要素であり、そのいずれを欠くこともできません。
 私ども社会保険労務士は、ヒトの採用から退職までの人事、労務、社会保険に関する諸問題、さらに老後の年金を含む生活設計に至るまで主にヒトに関するスペシャリストとして日々活動しております。
 なかでも、国民の関心が大きく、改正のたびにますます複雑になる公的年金の問題はどんな事業所にも関わる問題であるにもかかわらず、経営者にとっても分かりずらい点が多いのが実情です。
 今回は、日頃の相談の中から、重要かつ代表的な事例を掲載してみました。
 ぜひとも、ご一読いただきたいと思います。

昭和十九年八月生まれの男性です。
厚生年金には三八年加入しており、六〇歳以降もそのまま会社に残りますが、年金の請求はいつしたらいいのでしょうか?

六〇歳の誕生日を迎えたら、できるだけ早く請求してください。あなたの年代の人で、「厚生年金の請求は六二歳」と勘違いしている人は少なくありません。
 図のように、昭和十八年四月二日から昭和二〇年四月一日までに生まれた男性は、「定額部分と加給年金」は六二歳からの支給になりますが、全期間の給料(標準報酬月額)の平均と加入期間で計算する報酬比例部分は六〇歳から出ます。
 一般的な男性なら、報酬比例部分は年金全体の半分以上の額になりますが、国民年金のように「請求を先に延ばすと金額が増える」ということはありませんから、六二歳や六五歳で請求しても何の意味もありません。それどころか、何歳で請求するにしても、添付書類として、「本人が六〇歳になった時の配偶者の所得証明(前年分)」が必要ですから、とにかく六〇歳で請求しておけば間違いありません。 
 遅れて請求する場合、静岡県では、本来必要な加給年金が加算される時のものでなく、「六〇歳時のもの」を求められますが、五年も六年も前の所得証明を発行してくれる役所はあまりありません。
 給料が低ければ厚生年金が必ず出るから当然ですが、給料が高く六〇歳時点では「全額停止」でも定額部分が加算される年齢から「一部支給」になるような場合も、請求さえしておけば、自動的に振り込まれます。「六〇歳で請求」して、不利になることは一切ありませんが、請求しないことで生じる不都合はいくつかあります。
 「働いている」「給料が多い」などに関係なく、報酬比例部分が六〇歳から支給される昭和二八年(女性は三三年)四月一日までに生まれた人は、六〇歳で年金の請求をしておくべきです。



中小企業静岡(2004年1月号 No.602)