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活きつづける組合の原点

 原木の共同購入や加工をはじめ、幅広い事業を展開している清水港木材産業協同組合は、組合員七五名で、出資金が二三億円。一組合員当たりの出資の平均は、実に三千万円にのぼる。おそらく、この数字は日本一であろう。県内の最近一年間に設立された組合出資金の平均が三四〇万円ほどであることを考えると、この組合(設立時の出資金は四〇〇万円)がいかに傑出しているかが分かる。
 このデータを見る限りでは、さぞかし順風満帆の組合のように思えるが、決してそうではない。木材という不況業種であることと相俟って、大規模の組合になればなるほど、組合経営への悪影響もまた大きくもある。ピーク時には、出資金四〇億円・組合員一八〇名であったという。それゆえに多くの組合員の脱退などで事業を大幅に減少させつつ、賢実な財務を保っていくことは、並大抵のことではない。
 事実、オイルショックの当時、この組合の総会は大荒れで、午後一時に開会し、夕食抜きで夜の十時までも続いたこともあり、組合解散論まで吹き出したこともあった。
 そうした大きな山や谷をこえつつ、今年創立五〇周年を迎えることになった。そして、昨年の総会で理事長、副理事長が一新され、いま若い執行部において将来を見据えた、新たな長期計画の樹立を検討している。
 私は、この組合のありようを見ていると、創業理事長であった新間伊津平氏(前中央会会長)の「大きな者が、小さな者と一緒に歩く」という、常に組合の原点である相互扶助を基本に置いた運営が、脈々と引き継がれ、活きつづけていることに深い感銘を覚える。
 現在、国や県の中小企業施策は”集団よりも個“に焦点をしぼり、いわゆる個別のベンチャー型企業の育成をめざしている。しかし、私がいつも主張しているように、この組合の事例は集団、つまり組合のもつ役割も、決してあなどれないことを証明してあまりあると思う。

静岡県中小企業団体中央会・会長


中小企業静岡(2001年 4月号 No.569)