静岡県中小企業団体中央会Shizuoka Prefectural Federation of Small Business Associations. |
昭和43年10月1日 |
CHUOKAI MONTHLY 2008 December No.661 吸引通気式発酵システムで臭わず良質な堆肥を開発
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所在地:牧之原市大沢1052-1 |
“東洋一の大茶園”牧之原台地を抱える牧之原市で圃場整備や茶畑の改良工事などを手がける南榛原開発(株)。昭和43年に西川章一社長が24歳で創業した同社は、建設機械を農業用に改良するなど、優れたアイディアで数々の特許を取得、農業土木という分野を切り拓いたパイオニア企業である。
平成17年、経営革新計画の承認を受け、剪定材など木質系廃棄物のチップ事業にも乗り出し、市から剪定枝・刈草処理を受託。また昨年“エコアクション21”を認証取得し、建設、農業、環境を融合させた事業を積極的に進める。そのパイオニアが10年以上前から取り組むのが、家畜の糞尿、泥炭、チップなどを原料とする堆肥化事業だ。
「農業土木は、秋から春に工事が集中する繁閑の差が大きい業種。周年施工、平準受注を実現するため、もう一本、事業の柱が欲しかった」と西川社長。
まず着目したのが、軟弱不良水田で発生する泥炭。泥炭は乾燥粉砕工程後の保水性や通気性に優れ、含まれる土着菌には堆肥の発酵を促す効果がある。「これを活かさない手はないと思い立った」のがきっかけだ。
平成11年施行の「家畜排せつ物法」により畜糞の野積み・素掘りが禁じられたことも大きな転機となった。糞尿の処理は、畜産農家が抱える大きな悩み。畜糞の堆肥化は、以前から行われていたが、臭いなどがネックとなっていた。
この“利用価値はあるが厄介者”を組み合わせ、良質で臭わない堆肥をつくり、土壌改良材として活用しようという計画、「最初はどこも、とりあってくれませんでしたよ」と社長が苦笑を浮かべるほど周囲の反応は鈍かった。だが、絶対の自信があったというこのプランは、農水省の外郭団体の目にとまり、助成を受けて堆肥化プラントの設置にこぎつけた。
その最大の特長は、エアーレーション堆肥の発酵過程でアンモニアガスを吸い出す吸引通気式であること。
「従来の空気を送る方式では、臭いを撒き散らしてしまう。当方式は、パイプからアンモニアを吸気することで、臭いを押さえることに成功しました」。
暗渠排水工事の技術を応用し、ノウハウを蓄積してきた同社だからできたといえるだろう。
農家から集めた糞尿に乾燥させた泥炭や剪定材のチップを加え、攪拌した後、発酵させる。この過程で発生するアンモニア臭を敷設した6本のパイプで吸引し、スクラバ装置によりアンモニアガスを液肥化再利用する。このため、堆肥そのものはいうまでもなく、生産過程でもアンモニア臭はほとんど発生しない。さらに吸気することで好気性微生物が発生し、発酵を促す効果も得られる。このシステムをベースに昨年度から、脱臭過程で発生する液肥の有効利用を目的とした研究を研究機関などと始めるなど、進化はとまらない。
「2年以上頭から離れないアイディアは、実行すればモノになる。8割、9割の人が反対する企画
は特許が取れますよ」。
社長のことばからは自信が溢れる。
中小企業静岡(2008年12月号 No.661) |
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