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編集室便り

長年にわたり湿気を含み、膨れ上がり、虫食いでボロボロになった古文書や掛軸などの貴重な文化財。「今月のえがお」にご登場頂いた中井さんは、判読はもとより、触れることすら拒むような紙の塊を見違えるように甦らせる技師だ。

一度解体し、浄水で汚れを洗い落とし、虫食い穴一つひとつを丁寧にトレースする。本紙との重なりを最小限に切り取り、糊付け、穴埋めを施す…。この“職人芸”、当人の資質や向上心、努力などに支えられていることは言うまでもないが、先達からの伝承によるところも大きい。

今月号の特集「労働事情実態調査」によると、企業が高年齢者に期待することとして「技術・技能の承継」が「技術・技能を活かす」、「経験・人脈を活かす」などを大きく引き離し、トップに挙げられている。

企業に蓄積される“職人芸”という“無形資産”。その引継ぎを心待ちにする若手は多い。(住川)