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家族手当を誤って四年間払い過ぎてしまった場合(子供は十八歳まで支給する規定であったが二二歳まで払ってしまった)、全額返還してもらうことができますか?また、賃金から天引きすることができますか?


労働基準法には返還させることができるか否かの規定はありませんが、民法に「不当利得の返還義務」という規定があります。よって、返還させることができます。
 しかも、この質問のケースでは全額返還してもらうことができます。民法では「一般債権は十年の消滅時効」を定めています。質問は四年間の払い過ぎということですので全額返還請求が可能となります。但し、通常会社は扶養家族の生年月日等を知っていたと思われ、それにも関わらず誤って支給していたことになりますので、会社に過失があったことは否定できません。よって、全額返還請求は可能ですが、返還金額等について十分な話し合いの上、決定した方が良いと私は考えます。
 次に、返還してもらう場合に賃金から天引きできるかという質問ですが、先に説明の「賃金支払い五原則」の(3)に「全額払いの原則」というものがありました。ここで「全額」とは何かということですが、「所定の賃金支払日に支払うことが確定している賃金全額のこと」を指しています。よって、欠勤等は確定している賃金ではないため控除することに問題はありません。また、全額払いの原則には、法令に定めがある場合(所得税や社会保険料等)や労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面協定がある場合は例外として賃金からの控除が可能とされています。以上のことから、原則賃金からの控除は禁止されており、労働者に直接請求し返還してもらうことになりますが、書面協定があれば賃金からの控除は可能であるということになります。
 但し、民法の規定により相殺できる範囲は賃金総額の四分の一までとなっております。返還額によっては数回に分け賃金から控除するなど注意が必要です。




中小企業静岡(2002年 9月号 No.586)