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ここに着目 組合決算のツボ

出資配当金

剰余金処分の項でも述べたとおり、中協法では組合は損失をてん補し、利益準備金及び教育情報費用繰越金を控除した後でなければ剰余金を配当してはならず、剰余金は、定款の定めによって、組合員が組合の事業を利用した分量に応じ、又は年一割を超えない範囲内において払込済出資額に応じてしなければならない(中協法第59条1号、2号)こととなっている。

では、組合員に対する配当は、利用分量配当、出資配当どちらを優先すべきか。

中協法や組合の本質から考えて、利用分量配当を優先すべきだとの説もあるが、出資金の運用によって剰余金が生じた面も無視することができず、法律で制限している年1割を超えない範囲内での出資配当を行うことは、法の精神に反するものではないので、利用分量配当と出資配当とを併せて行うことが妥当な配当のあり方ではないかと判断される。

実際の運営方法では、共同体としての資本充実を図るための出資金に対し、適正金利を支払うという意味で、まず出資配当し、残額を利用分量配当とすることが望ましいとする意見もある。

出資配当は、利用分量配当と異なり課税対象金額とされる上に、支払にあたっては20%の源泉所得税を徴収しなければならないなどから、とかく出資配当の方が利用分量配当より敬遠される傾向もある。

出資配当金は、組合員にとって通常の配当金であり、法人組合員では受取配当金の益金不算入、個人組合員では配当控除の対象となる。

組合は、通常総会に提出する剰余金処分案の作成にあたって、あらかじめ定めた率を各組合員の出資額に乗じて各組合員の配当金額を計算しその総額を剰余金処分案に出資配当金として計上する。配当金の計算にあたっての端数処理については、通常定款に定めがあるので、それを参照して計算することが必要となる。

年度の途中において増資払込みが行われたときは、払込日を異にするに従って年度中における払込金の稼動期間が異なるので、各月末の払込済出資金を基にした月割計算や積数計算によって配当金額を計算すればよい。

組合に未払込出資金がある場合、定款で配当金を出資金に充当する旨の規定があるときは、払込完了に至るまで配当金を出資払込に充てることができる。

組合員持分

「組合員持分」には、ふたつの意義がある。

ひとつは、組合員が組合に対して有する権利義務の総称、つまり組合員たる地位を意味する場合。もうひとつは、組合員が組合財産に対して共有部分として有する計算上の価額を意味する場合である。

例えば法で「持分の譲渡」といえば前者を、「持分の払い戻し」といえば後者を指す。

組合員は、原則、組合を脱退すると同時にその持分の払戻請求権を取得する。

この請求権は、組合員の絶対権だが、その権利の行使は「定款に定めるところにより」行われなければならず、また、「持分の全部又は一部の払戻を請求することができる」とあるので、定款に一部払戻しの規定を置くことはできるものとされている。したがって、定款の規定によっては、全部の払戻しを受ける場合、あるいは、その一部だけの払戻しか受けられない場合もある。

脱退した組合員の持分は、その脱退した事業年度の終わりにおける組合財産によって算定される。この場合の財産の評価は、協同組合の事業の継続を前提とし、なるべく有利に一括譲渡する価額=時価によるべきものとされている(昭和44年2月11日、最高裁判決)。

持分払戻請求権は、持分の算定後に行使されることになるから、自由脱退の場合は問題ないが、法定脱退の場合は脱退と同時に請求権を取得しても、事業年度末まではこれを行使することができない

法は持分の算定方法について特に定めていないため、組合の定款で自由に定めてよい。一般には、改算式持分算定方法(均等式持分算定方式)と加算式持分算定方法の2つがある。

改算式は、出資1口につき各持分が均等となる方法で、具体的には、組合の正味財産の価額を出資総口数で除することにより出資1口についての持分額を算定する方法である。この方法は簡便であるが、出資1口当たりの持分額を維持するため、原始加入者及び増口分の出資払込みに際しては、持分調整金としての加入金を徴収する必要が生じる。

ただし、組合の正味財産が出資金を上回っている場合でも、定款の規定により脱退者の持分の払戻しを出資額限度としている組合は、持分を調整する必要が生じないので、持分調整金は徴収できない

持分調整金としての加入金は、法人税法上資本等取引に該当し、益金不算入となる。

一方、加算式は、各組合員につき事業年度ごとに、組合の正味財産に属する出資金、準備金、積立金その他の財産についてその組合員の出資口数、払込済出資金額又は事業の利用分量(企業組合にあっては従事分量)を標準として算定加算(損失が生じた場合はそのてん補額を控除)する方法である。

この方法によるときは、各組合員の持分は、加入時期、事業の利用量等により不均一となり、その計算も事務処理も複雑となるが、持分調整金の問題は生じない。

《参考資料》

  • 「中小企業等協同組合会計基準」
    全国中央会編 第一法規
  • 「中小企業組合必携」
    全国中央会著 全国協同出版
  • 「中小企業等協同組合法逐条解説」
    全国中央会編集
    中小企業庁創業連携推進課監修 第一法規
  • 「協同組合の会計と税務」
    大阪監査法人 編 清文社
  • 「中小企業組合会計(決算編)」
    全国中央会編 (財)中小企業情報化促進協会
静岡県中央会でも販売している組合向けの参考図書。