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特集

動き出した「農商工連携」への取り組み
農商工等連携促進法 施行

2つの事業スキーム

農商工等連携促進法では、「農商工等連携事業」と「農商工等連携支援事業」の2つの事業スキームが用意された。

前者は、中小企業者と農林漁業者が有機的に連携してそれぞれの経営資源を活用し共同で新商品の開発等に取り組み、認定を受けるもの、後者は、公益法人やNPOが農商工連携等事業に取り組む事業に対する指導・支援を行う計画を策定し、認定を受けるものだ(図表2)。

両者ともこれらの事業計画(計画期間:5年以内)を国が策定する「基本方針」に基づいて作成し、主務大臣に提出。その計画が認定されれば各種の支援が受けられる。

ここでは、事業者を対象とする「農商工等連携事業」を中心にその概要を紹介する。

 

図表2 農商工等連携促進法が支援する二つの事業スキーム(拡大図を見る

 

「農商工連携事業計画」の認定を受けるには

中小企業者と農林漁業者が共同で実施する事業であることが前提である。両者が「共同」して「農商工等連携事業計画」を作成し、国に申請する。この計画が、主務大臣の定める「基本方針」に沿ったものとして認定されると、各種の優遇措置を受けることができる。

「基本方針」には、農商工連携事業の要件として次の3点が挙げられている。

1.中小企業者と農林漁業者が有機的に連携して事業を実施すること。

「有機的連携」とは、中小企業者と農林漁業者のそれぞれが、相手方は保有していないが自らは保有する経営資源(人材・設備・技術等)を互いに持ち寄り、連携事業期間を通じて、両者いずれもが主体的な参画することである。

2.中小企業者と農林漁業者それぞれの経営資源を有効に活用したものであること。

「経営資源」とは、「設備、技術、個人の有する知識及び技能その他ビジネスノウハウ、知的財産権等を含む事業活動に活用される資源一般」と定義され、販売方法や栽培、採取方法などのノウハウや生産技術も含まれる。

3.新商品若しくは新役務の開発、生産又は需要の開拓が実現すること。

認定の対象となる事業計画は、

(1)新商品の開発(新役務の開発)
(2)新商品の生産(新役務の提供)
(3)新商品の需要の開拓(新役務の需要の開拓)

のいずれか1つを満たしていることが条件だ。開発、生産(提供)、需要開拓のステージに合わせた事業計画の策定が可能だが、当該新商品等の売上増、付加価値増など、経営向上・改善に向けた計画実現のための具体策が必要となる。

ここでいう「新商品、新役務(サービス)」とは、事業の実施主体である中小企業者や農林漁業者にとって、これまで開発したことのない新たなサービスや商品であればよく、市場における従来品や競合・類似品に対し、優位性があることであり、「世の中にとって新しいものを創出すること」を狙いとする新連携事業とは異なる。

では、具体的にどんな事例が認められるのか。経産省と農林水産省では、今年4月、農林漁業者と商工業者等が連携して、それぞれの技術や特徴等を活用している先進的な取組を「農商工連携88選」として選定した。

中小企業者では、農林水産物を活用した新たな加工食品、化粧品の開発・製造・販売、レストランでの新メニューの提供、農林水産物やその加工品の直売所の設置など、農林漁業者では、中小企業の技術を活用した新しい品種の開発・生産などが「新商品」、「新サービス」として「88選」に選ばれた。

また、農商工連携事業を通じ、「中小企業の経営の向上かつ農林漁業者の農林漁業経営の改善が実現すること」も求められる。

これら効果を客観的に明確にするために、事業計画の認定にあたっては、定量的な経営指標が判断基準となる。

事業の計画実施期間は、原則5年以内で、中小企業者及び農林漁業者いずれも付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が5年で5%(計画期間が4年の場合は4%、3年の場合は3%)以上向上すること(従業員1人当たりの付加価値額でも可)が条件だ。

これに加え、中小企業者は、新商品・新役務の売上げによって、総売上高が5年で5%(計画期間が4年の場合は4%、3年の場合は3%)以上増加する見込みであること、農林漁業者は、新商品・新役務にかかる農産物等の売上高が、計画開始期間における事業者の総売上高と比較して、5年で5%(計画期間が4年の場合は4%、3年の場合は3%)以上となる見込みであることが求められている。