オープニングに続いて行われた基調講演では、三菱総合研究所上席研究理事の佐藤公久氏が、「活力ある中小企業への提言」をテーマに講演。
構造変革期の中にあって、柔軟性に長ける中小企業には、今がチャンスの時代と位置づけ、ユーザートレンドの把握をベースにした企業個性の確立が重要と提言した。
重視したい四つの「先見情報」
企業人としてまず重視したいのは、これからあげる四つの先見情報である。
その第一は、「スピードの経営」である。今や従来のようにタイミングをはかった経営では変化についていけない。「座っている奴が転んだ奴を笑うな!」
の言葉のとおり、アクションを起こす経営が今こそ求められている。
二番目は、「国際情報の有効活用」である。年末に発行されるニューズウェーク誌では、その年に注目すべき人物を紹介しているが、ナンバーワン経営者の基準は、成功者ではなく挑戦者である。この挑戦者こそが欧米での評価の基準であることにぜひ注目してほしい。
第三の着目点は、「各調査機関が発表する経済見通し」、そして四点目は、「各証券会社の発表する企業業績の見通し」である。
しかしここで特に認識したいのは、行政に景気浮揚策を期待する時代ではなくなったという点だ。
私は「再び米国に学べ、再び米国に追いつけ」という言葉をよく使う。米国では、政府の規制緩和策でマーケットをオープンにしたが、それを開花させたのは民間のパワーである。道を切り開こうとする挑戦者にはいくらでもチャンスがある時代なのである。
中小企業に有利な時代に
これからは、「よいモノを安く売る」ということではなく、「ユニークな顧客に個性的な商品を提供する」ことが求められる時代である。これは小回りが効き、柔軟性がある中小企業には、まさにうってつけの時代であるといえる。
このユニークな商品づくりには、市場のトレンドを的確につかむユーザーウォッチが不可欠であり、そういう意味でも情報ネットワークは、この情報収集のツールとして大いに役立つ。
これは、製造業に限ったことではない。
例えば、コンビニが成功したのは、客層を学生や独身者にしぼり、最大の顧客である主婦を捨てた点にある。「品揃えが豊富でより安い店」という主婦の買物のコンセプトを捨て、近場で二四時間あいているというサービスを提供する「マーケットを絞り込んだ戦略」である。
今のマーケットは「効率」が全てという時代ではない。一見無駄や遊びのようなものの中にも、ユーザーとのコミュニケーションに役立つものもあり、全てを効率という観点から判断する会社は間違いなく潰れていく。
中小企業の対内戦略
中小企業で意外と遅れているのが、合理化をはじめとする「対内戦略」である。
企業自身も、大きいことはよいことだという考え方はもう終わった。これからは、分業化とグループ経営の併用によるフレキシブルな企業経営が決め手となる。
そういう意味でも、組合という組織は、この組織自体がさらに柔軟に活用できるようになれば、大きな機能を発揮するものとして注目できる。
いずれにしても、企業規模より、企業の個性が問われる時代にあって、中小企業にも十分チャンスが巡ってくる時代がやってきたといえる。
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