特 集 
 「くみあい百景」 
 編集室便り 



特 集



事 例

 平成十三年度・十四年度に法の承認をうけた三社の経営者を取材した。新商品の開発や製品量産化、内製化による体質強化など、その狙いと効果は非常に興味深い。



第一印刷(株)

特許申請した紙缶製造装置

平面紙の紙缶開発で納期短縮や低価格を実現

 同社はオフセット印刷を中心に、打抜きや製函まで行う一貫紙器メーカーとして、各種の包装資材を供給している。
 かつて、包装は重厚で華美なものが主流であったが、バブル崩壊後は一転。簡略化が進み、業界全体としても、受注量の減少に苦悩している。
 こうした中、同社は自ら紙缶製造機を開発し、紙缶の製造販売に乗り出した。茶缶や海苔缶の主流を占めるブリキ缶に代わるものとして、着目したものだ。

テーマは製造装置の開発

 近年、缶や容器は多様化の時代に入っている。例えば、缶といえばブリキなどの金属缶が一般的であり、チョコレートやクッキーなど菓子類には、スパイラル(巻きつけ)状の紙缶が普及している。
 同社が着目したのは、ブリキ缶でもなくスパイラル紙缶でもない、新たな紙缶である。そして、その製造装置の開発が経営革新の主要テーマとなった。

経営革新の内容

 紙缶を考案した主な理由は、価格優位による紙製品の業界浸透である。ブリキは素材として割高。紙はどうかといえば、主流を占めるスパイラル紙缶の場合、紙を筒状に巻きつける鉄芯がコスト高の一因となっている。そこで、伊藤社長にある考えが浮かんだ。
「鉄芯を使わなければいい。では、どうするか。まず、紙を寸断し、機械でこれを丸めたらどうか。鉄芯を用いるこれまでの工法とは逆の発想だ」。
 この工法や製造装置、生み出された紙缶などは、既に特許出願済みである。



▲多様な演出が可能な紙缶

得られた成果

 計画通り五千万円を投じ、機械設備を設置。平成十四年の秋から紙缶製造に入った。
 紙缶の売上げは、認知不足もあって当初の計画に届いていない。実は、伊藤社長に一つの誤算があった。それは、他製品と比べはるかに優位に立つはずの価格が、競合メーカーの一気の値下げにより、コストパフォーマンスにやや陰りが出た点だ。
「参入して改めて感じるのは、価格競争だけでは互いの首を絞めるだけ。空缶の再(二次)利用を志向する人は、割高でもブリキ缶を選ぶわけで、要は、顧客の用途・価値観に合わせた棲み分けを考えていければ」と伊藤社長は考え直す。とはいえ、
「すぐ売上に直結しなくても営業での話題性は十分。納期の面でも、加工工程が少ないウチが有利。事実、数年で得意先は一割増えた。紙缶の知名度向上と共に売上も増えていくはず」と強気の姿勢は崩していない。


 本 社 静岡市与一
 代表者 伊藤均
 設 立 昭和二八年
 資本金 一〇〇〇万円 
 業 種 印刷・製函業 
 法承認 十四年六月




中小企業静岡(2004年9月号 No.610)