特 集 
 「くみあい百景」 
 編集室便り 



 指導員の現場から 
いくつかの創業形態
その中で組合の
得失を考える



創業は組合で間違いない!

 昭和六一年に国内企業の開廃業率が逆転してから、既に二〇年近くが経とうとしている。今年になって景気は上向いていると言われているが、新たな企業が生まれてこないことには、本当の意味での日本経済の復活はありえない。
 それでは、起業のネックになっているものは何なのか? 経営の三要素といわれるヒト・モノ・カネも一つの要因になっているのではないか。資本金については、最低資本の枠が取り払われ「一円」でも会社ができるようになった。しかし、企業活動に必要な「カネ」とは、決して資本金だけの問題ではないはずだ。資本が一円では、投資はもちろんのこと、日々の資金繰りもままならない。

組合組織で起業に挑戦!

 そこで、注目されているのが組合という組織である。
 そのひとつに、個人が四人以上集まって新たな企業体を構成する企業組合がある。互いに不足している能力を補いあうことで「ヒト」の問題はクリアできる。「カネ」についても四人以上で持ち合うことになるので、一人あたりの負担は大きく低減される。このことから、近年「企業組合」の需要は高まり、本県では主に創業手段として、ここ三年間で十二の組合が設立された。
 次に「第二創業」を考えた場合、こちらは、協同組合組織が有効と思われる。一社ではリスクの高い投資も分散されるし、新たに必要とされる人材の雇用や設備投資も既に所有する財産を共有することでクリアされる。税制上の特典等もあるし、補助金を受けられるチャンスもある。
 以上の点を活かし、新たなチャレンジについてはまず協同組合で取り組み、成果次第では株式会社に移行するという手もある。

ソフト事業が開業率上げる

 このように、組合は意外と起業に向いている組織だといえる。しかし、優遇されている面がある分、規制されていることもある。開業率を高めるためには、若干制度を見直すことも必要だと思われる。
 例えば、組合設立の条件として、直接的に組合員の利益を図る共同経済事業の実施が条件とされている。しかし、研究開発等の非経済事業を主要目的に組合を設立したいというニーズも根強くある。
 非経済事業のみで設立が認められれば、起業が増え当然開業率もアップするものと思われる。

「組合」ってかっこ悪い?

 以前、創業希望者を対象に組合組織を活用して起業した事例をセミナーで紹介したことがある。その会場で「組合っていう名前がカッコ悪いね」という声がどこからか聞こえてきた。
 そういえば、農協がJAという呼び方を定着させた例もある。全てを若者に迎合する必要はないが、起業を促進する一つの手段として、中小企業組合の新たな呼称を考えてみるのも手ではないだろうか。
(渡辺)



中小企業静岡(2004年9月号 No.610)