高度化資金の完済を迎えて
裏の共有緑地は、誰のもの?
「うちの団地、高度化資金の完済が間近だけど、土地名義を組合から自分の会社に変えたら裏の共有緑地も自分のもの?」
ある団地組合さんでの会話です。思わず返事に詰まりました。
高度化資金の完済を迎える団地組合に共通する関心は、土地の名義をどうするのかということではないでしょうか。
専用土地名義を組合のままでおいておくのか、組合員名義に変えるのか。これは税金も絡み、一筋縄ではいかない問題だと思います。
こういった話のときによく聞かれるのが「団地の一体性を保つためには、云々」といった口上です。「一体性」を「目的」とはき違えたと思える意見も耳にします。「団地の一体性」はいうまでもなく個々の組合員が発展することを目的とした「手段」です。
名義変更も良し悪し
名義変更に対する組合間の温度差は、共同事業への期待、公的融資・補助事業の受け皿たる組合の存在自体への依存度、等の強弱によって生じます。
名義を組合のままにしておく場合と組合員に変更する場合とでは、一長一短があります。
組合名義のままにしておく場合のメリットの筆頭は、税務上の問題。名義変更をしなければ不動産取得税、登録免許税等の支払いが生じません。また、組合の統制力、資金調達力を高い水準で維持できる点も忘れてはなりません。組合員が金融事業を活用する際、他の組合員の信用力がものをいうことも少なくないのではないでしょうか。さらに言えることは、組合の債権保全がし易いことです。これにより第三者の侵入、居座りの回避が容易となります。
組合名義にしておく場合のデメリットは、組合員の所有欲を満足させられない、組合員の自主的な担保活用ができない、といったことが考えられます。
これに対して組合員名義に所有権移転する場合は、前記のメリット、デメリットが反転することはいうまでもありません。
それでも名義変更をしたい?
組合員名義に変更する場合に生じる一体性への不安を緩和するには、団地内物件の権利関係が重要な意味を持つことを認識する必要があると思います。
数年前に県内工業団地を対象とした調査では、「(再)売買予約契約に基づく所有権移転請求権の仮登記」が、具体的な保全措置として最も多かったように記憶しています。
ここまで読むと、「そうまでして名義変更をしたいの」という気持ちになりませんか?
名義はそのままで、組合が持つ潜在能力にもう一度目を向け、自社の成長のためにとことん活用する方が得策かもしれません。名義変更に伴う税金は会社の運転資金に回し、高度化「資金」のゴールを高度化「事業」の新たなスタートに替えて羽ばたいていってほしいと思います。(小林)
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